“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
CBとFW両方の才を持つ田上大地。
長崎でJ1初ゴールを決めた必然。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2018/03/03 07:00
J1の舞台で初ゴールを決めて喜ぶ田上。チームメイトとよく練習していたパターンだったそうだ。
流経大・中野監督の英断。
これまでFWのレギュラーとして出場していた田上は、関東大学リーグ第8節の早稲田大戦で、CBに「再コンバート」されたのだ。
ちょうどこの時、チームはリーグにおいて3勝4敗と負け越し、9得点13失点と失点の多さが問題だった。田上自身も7試合で2ゴールしか挙げていない惨状だった。
「彼は非常に真面目な選手。前線に置くより、CBとして責任を背負わせた方がしっかりと堅実なプレーができる。きちんと考えてプレーができるので、慣れ親しんだ最終ラインの方がコーチングなどでも周りを動かしてくれると思ったんです」(流経大・中野雄二監督)
この中野監督のコンバートは的中し、そこから田上は流通経済大の最終ラインの門番として不動の存在となった。
8月の総理大臣杯の頃には、すっかりDFリーダーとなった田上によって安定感を取り戻した守備をベースに、夏の王者にまで駆け上がった。
CBの方が「自信を持ってプレーできる」。
中でも印象的だったのは、その年の12月の全日本大学サッカー選手権(インカレ)だった。
守備の要となっていた田上は初戦の九州産業大戦から圧巻の存在感を見せて、相手の攻撃をシャットアウト。決勝では関西学院大と対戦し、FWの呉屋を完璧に抑えて1-0の勝利。夏冬連覇の立役者となった。
「ウチの強みは守備の安定感。田上がうまくラインコントロールをしてくれて、簡単にラインを下げないし、人に対しても強くいってくれる。本当に頼もしくなった」
その頃には、中野監督も絶賛するほどの、十二分な存在感を示すほどに成長していた。
「やっぱりCBの方が自分の思ったことをやれるというか、チームのために身体を張れるというか、自信を持ってプレーできますね。僕は周りと比べて上手い選手じゃない。FWのときは(高校時代チームメイトだった)呉屋や宮本が大学で点を獲る姿を見て、『やっぱり素質が違うんだ』と正直思い知らされました。だからこそ、CBとして『絶対に負けたくない』と思ってプレーしました」