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高校生・福田湧矢をクルピが大抜擢。
ガンバが探す次の「第1ボランチ」。
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byGetty Images
posted2018/03/01 11:15
稲本潤一、宇佐美貴史、井手口陽介……G大阪は若手が抜擢され、中軸となる伝統がある。福田もその系譜を継げるか。
井手口移籍、今野負傷のダブルパンチ。
名実ともにガンバ大阪の中心選手に成長していた井手口陽介はチームの始動を前に、イングランド2部のリーズ・ユナイテッドに完全移籍。現在は期限付き移籍でスペイン2部のクルトゥラル・レオネサでプレーしている。
開幕前にクルピ監督が番記者らに応じた囲み取材では、ほぼ毎日、井手口の名を挙げており、その不在に頭を悩ませる様子が見て取れた。
ブラジル人指揮官の苦悩に、更に追い打ちをかけたのが今野泰幸の負傷離脱である。
日本では一口に「ボランチ」の枠で括りがちだが、ボランチという概念を生み出したブラジルでは、守備に軸足を置くボランチを「プリメイロ(第1)ボランチ」、攻撃に絡むボランチを「セグンド(第2)ボランチ」と厳密に区別する。
井手口不在の今季、今野のバックアッパーになりうる第1ボランチの確保は急務だったはずだが、フロントの見通しの甘さは今季も相変わらず。新戦力として浦和から獲得した矢島慎也も本来は第2ボランチである。
「ノス・テモス・メニーノス」
開幕を1週間後に控えた2月17日の徳島戦では、J2勢相手に3対7の割合でボールを支配され、0-2で完敗。前後半通じてボランチで試されたのは遠藤保仁と市丸瑞希、矢島の3人だったが、この試合が福田抜擢に向けたターニングポイントだった。
徳島戦後、今野不在で構成する中盤へのテコ入れを問われた指揮官はこう発言した。
「ノス・テモス・メニーノス(我々には少年たちがいる)」
若手登用に長けたクルピ監督が福田をボランチに起用したのは、その攻撃面を期待してのことではない。ダイナミックにピッチ狭しと駆け回り、相手の攻撃の芽を摘む井手口の姿を福田に重ねていたに違いない。