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ミキッチが「新たな家族」と惚れる
湘南・塚田通訳のセルビア流伝達力。
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byMasayuki Sugizono
posted2018/02/27 08:00
湘南の練習場での塚田通訳とステバノヴィッチ。ミキッチ同様、早くも打ち解けた間柄になった。
セルビアでプロデビューし、後の大学へ。
塚田は現地の語学学校に通いながら、セルビアの2部、3部リーグのクラブで1年半プレー。ケガでプレーヤーの道をあきらめたが、日本に戻ることはなかった。指導者を志し、セルビアのベオグラード大学サッカー学科へ入学。コーチング、スポーツ医学などを約3年かけて学んだ。バルカン諸国のサッカーに精通し、セルビア語も自在に操る通訳の下地はこうして築かれた。
ポポヴィッチ監督、イヴィッツァ・バルバリッチ監督(札幌時代)、そして昨季途中から湘南でドラガン・ムルジャ(今オフにスロベニアへ移籍)の通訳を務め、今季はクロアチア人のミキッチとセルビア人のアレン・ステバノヴィッチをサポートしている。
練習が終わると、一緒に食事に出かけて、ピッチ外でもコミュニケーションを取る。イタリアンレストランでパスタを巻き、和食屋でまぐろの刺身を口に入れながら、腹を割って話し合える関係を築いている。
「何でも言い合える関係にならないといけないので。まず僕が本音を話さないと、相手も本音を言えない。遠慮すると、選手にとってもよくない。リスペクトは欠かさないけれど、何でもストレートに言う。チームにとって一番いいことは何かを考えている」
「ツカダはセルビア人みたいだ(笑)」
日本で初めて暮らすステバノヴィッチは新しい環境に馴染む努力をしているなか、塚田氏にはすでに心を許している。
「日本に来てセルビア語が話せなかったらもっと苦労したかもね。まさか、ここまで普通に話せるとは思わなかった。ツカダはセルビア人みたいだ(笑)」
塚田氏のざっくばらんなキャラクターも、そう思わせているのだろう。
「僕は、きっちりしていて真面目という日本人の気質とかけ離れているので。そういうところもあるかも」と豪快に笑う。
言葉だけではない。バルカン諸国の文化を知り、サッカーを深く理解する塚田氏だからこそ信頼されているのだ。
曹貴裁監督も、その仕事ぶりを認めている。
「(塚田は)伝達する能力が高い。通訳はただ言葉を伝えるだけが仕事ではない。監督が伝えたいことを、伝えないといけない。話の前後関係を考えて、選手に説明するのが理想。監督がなぜその指示を出したのかも伝えないと。すごく難しい仕事だと思う」