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サンウルブズは「ロマンより勝ち点」。
観客がトライを求めて騒然としても。
posted2018/02/26 11:40
text by
永田洋光Hiromitsu Nagata
photograph by
Kiichi Matsumoto
2019年W杯に向けた日本代表強化の一環として結成されたサンウルブズが、スーパーラグビーに加わって3シーズン。24日に迎えた今季開幕戦は過去2シーズンとは違って、秩父宮ラグビー場に集った観客が、最後まで勝利に期待を抱いたゲームだった。
後半28分にオーストラリアの強豪ブランビーズにトライを追加され、22-32とスコアを広げられて勝利が遠のいても、残り90秒でサンウルブズがスクラムから相手ボールを奪って反撃するや、最後にトライを見たい1万4614人は、声をからして15人の男たちを励まし続けた。
ピッチ上の15人も、声援に応える。
まず、この試合で2トライを挙げてスーパーラグビー・デビューを飾ったWTBホセア・サウマキが、力強いボールキャリーでハーフウェイラインを越える。
そして、ボールを継続。
残り30秒で左に展開し、ふたたびサウマキにボールを持たせて22メートルラインを突破。
途中出場のCTBシオネ・テアウパがゴールラインまであと5メートルに迫ったところで場内にサイレンが鳴り響き、反則以外でゲームが途切れれば試合が終了することを告げる。
場内はトライを求めて騒然。
それでも、サンウルブズは、攻め続ける。
こちらもこの試合がスーパーラグビー・デビューのLO姫野和樹が、ゴールラインまであと1メートルと迫る。が、ボールは密集に呑み込まれて出てこない。
ニュージーランド人のレフェリー、ポール・ウィリアムズの右手が斜めに上がり、サンウルブズにペナルティキックが与えられる。
点差は10点。
今さらトライを奪っても勝敗は覆らない。だが、場内はトライを求めて騒然としている。
サンウルブズは、冷静だった。
最後にトライを奪ってゲームを終えるロマンチックな結末ではなく、PGの3点を獲得して7点差以内負けに与えられるボーナスポイントを確実に稼ぐ、現実的なオプションを選択した。