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内田篤人が指名した意外な重要人物。
夏の移籍も「憲剛さんに相談したの」。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byAFLO
posted2018/01/30 07:00
内田篤人と中村憲剛、ツーショットのイメージは強くない。しかし、2人の間には不思議な結びつきがあるのだ。
電話を受けて「え、やめんのかなって」。
取材意図を解した中村は、急な指名に少しだけ驚きつつ、笑顔というよりも爆笑しながら迎えてくれた。
「そもそもあいつから普段は電話かかってこない。かけあう仲でもないし、別にプライベートでもオフに必ず会うとかでもないんですよ」
お互いの認識は一致しているようだ。さて、まずは昨夏の電話について聞く。
「電話がかかってきたときに“なんかこれ、あったな”って思ったんですよ。ケガしていたのは膝だったでしょ? え、やめんのかなって思ったんです。俺全然知らなくて、彼の膝の状態を。プレーしてないのをニュースで見て知っている程度で。
良くなってシャルケで(夏のプレシーズンの)練習試合に出始めて……ちょうどそれくらいだったと思う。だからよく考えて(引退とは)違うなと思って電話にでたら、『シャルケから移籍しようか迷ってる』って言われて」
中村「あいつ、オレのこと“憲ちゃん”って(笑)」
電話を受けた中村は、じっくりと話を聞くことができる状況にあった。
「ちょうど美容室に髪切りに行ってて、まさに入り口に入った時にかかってきて。『え?』って。そもそも電話自体あまりかかってこないから、ぱっと見て、『え、内田篤人?』って。ちょっと外に出て20分、30分話したかな。
あいつが、その電話で何かを決断するとも思ってなかった。だけど、思っていることは伝えなきゃいけないなっていう。電話の内容からしても……うん、ふざけてる感じじゃなかったから。
選手としての岐路、ましてや日本かドイツか(の選択)っていう。だから、いろんな葛藤があったんじゃないかな。『どうしよ、憲ちゃん』っていうんですよ。そう、あいつ、オレのこと“憲ちゃん”って言うんですよ。何歳違いなんだよって(笑)」
中村は、悔いを残さない選択を、と素直に思いを伝えた。