球体とリズムBACK NUMBER
ショートパス信仰は日本以外にも。
ハリルに求めたい「信じること」。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byYuki Suenaga
posted2017/12/20 11:00
代表監督にはチームコンセプトとともに、モチベーターとしての資質も問われる。指揮官はその能力を本番までの半年間でどう発揮するか。
ショートパスを大事にするのは日本人だけではない。
比べるところではないかもしれないが、ひとつ言えるのは、ショートパスを大事にするのは日本人だけではない、ということ。ただし、それが理想に近いということも理解しているので、ポゼッションだけを求めたりはしない。マイナーチェンジを施してほしいだけだ。
効果的ではないロングボールを蹴り続けるだけでは、やっている方も観ている方も飽きてくる。時に中央から組み立て、リズムを生み出してほしい。良いリズムは音楽だけでなく、文学やジャーナリズム、そしてフットボールでも、人々を惹きつけるために重要なものだ。
「地獄から天国に行った気分だろうね」
先日、パリのチャンピオンズリーグの会場で出会ったアルジェリアの日刊紙『エル・ワタン』のナセル・マブルーク記者は、こんなことを言った。
「ハリルホジッチは地獄(アルジェリア)から天国(日本)に行った気分だろうね。想像できると思うけど、アラブのメディアは感情に火がつきやすいんだ。また当時、一部のアルジェリア人記者たちは選手選考に関して、彼と兄が共謀して特定の選手を選び、懇意にしているクラブから私利を得たなどと、ありもしない噂を書きたてた。そんなこと、日本では起こらないだろう?」
オーケー、ダコール。たしかに、僕らは分別を大事にする。でも要求すべきことは、きちんと要求したいと思う。
ハリルホジッチ監督には、選手の技術を信頼して、もう少し前向きなフットボールを展開してほしい。ジョゼップ・グアルディオラのシティのようなスーパーなポゼッションは無理だとしても、可能性の低いロングボールばかりでは、フットボールは前に進まない。