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ダービー上位陣不在の菊花賞は芦毛!?
ゴルシ、ヒシミラクル、では今年は。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byYuji Takahashi
posted2017/10/21 08:00
驚異的な早仕掛けで菊花賞を制したゴールドシップ。2010年代にインパクトを残した“芦毛の怪物”だ。
やる気になった向正面で仕掛けてひとマクリ。
馬群が向正面なかほどに差しかかったとき、スタンドがどよめいた。ゴールドシップが早くも動き出したのだ。「競馬の常識」では「京都の外回りは3コーナーの坂を下るまでは仕掛けを我慢すべし」となっており、その前に脚を使うと最後に息切れすると言われている。しかし、それは普通の馬にのみ当てはまることだ。
この馬は普通ではなかった。ひときわ目立つ芦毛の馬体が、他馬とは別次元の速度で外から上がって行く。
内田は「ゴールドシップの場合は、馬がやる気になったところが仕掛けのポイントなんです」と言う。動き出す場所がどこでも、ペースが速くても遅くても、相手が強くても弱くても、この馬の場合、どうでもいいのだ。とにかく、本人が行くと決めれば凄まじい脚で伸びるし、行きたくないと思えば、押しても叩いても動かない。
この菊花賞では3コーナー手前の坂下からやる気になり、前をひとマクりにした。そして、直線入口で先頭に躍り出た。さすが、輪乗りのとき他馬が怯えて逃げていったというほどの怪物だ。「豪脚」という表現がこれほど似合う馬を久しぶりに見た。
「ディープぐらいしかできないレースをしてくれた」
ゴールドシップは、怪力で他馬をねじ伏せるような走りで、皐月賞につづく二冠制覇を達成した。
「ぼくも強気で乗りました。ディープインパクトぐらいしかできないと思われていたレースをしてくれましたね」と内田は最強の相棒を讃える。
古馬との初対決となった次走の有馬記念も圧巻だった。ラスト800mから驚異的なロングスパートをかけて優勝。'90年のオグリキャップ以来の芦毛のグランプリホースとなり、'12年度の最優秀3歳牡馬に選出された。
芦毛馬が勝った菊花賞は、インパクトの強いレースが多い。
2002年は、スタート直後に1番人気のノーリーズンの武豊が落馬し、場内が騒然となった。波乱の幕開けとなったこのレースを、単勝3660円の伏兵ヒシミラクルが制し、16番人気のファストタテヤマが2着に突っ込んできた。馬連9万6070円、馬単18万2540円という大穴馬券となった。
'98年はセイウンスカイがダービー馬スペシャルウィークを3馬身半も突き放し、'93年はビワハヤヒデが5馬身差で圧勝。'90年はメジロマックイーンとホワイトストーンの芦毛2頭のワンツーフィニッシュで決着した。