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前田健太と“脇役たち”の貢献度。
ドジャースが思い出した必勝の形。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2017/10/14 11:00

前田健太と“脇役たち”の貢献度。ドジャースが思い出した必勝の形。<Number Web> photograph by AFLO

本来とは違うセットアッパーの役割で好投した前田。今後はダルビッシュやカーショーからの必勝リレーの可能性もある。

1点リードの5回途中に好救援、その後4点を追加。

 なかでも光ったのは前田の好投だ。この日の彼は、3対2とリードした5回1死から登板し、2番A・J・ポロックを空振りの三振、3番ポール・ゴールドシュミットを遊ゴロに討ち取っている。その裏、ドジャースは4点を加え、一気にダイヤモンドバックスを突き放す。

 攻撃面でも、脇役の活躍は眼を惹いた。4回裏、1対2とリードされていたドジャースは、1死から6番ローガン・フォーサイスが左前打で出塁する。メジャー7年目にして初めてポストシーズンに出場した苦労人の痛烈な一打だ。すると7番オースティン・バーンズと8番ヤシエル・プイグが、右前と中前に連打して満塁のチャンスを築く。

 ここでヒルの代打に出たカイル・ファーマーが、レイに食い下がる。結果は三振だったが、4球目にワイルドピッチを誘ったばかりか(フォーサイスが同点のホームを踏んだ)ファウルでさんざん粘って球数を投げさせたのだ。疲れたレイは、次打者クリス・テイラーに内野安打を許し、ハーンズが還って逆転に成功する。

 ここに並べた名前の渋さに、注目していただきたい。コーリー・シーガーも、ジャスティン・ターナーも、コーディ・ベリンジャーも、この得点には関与していない。つづく5回裏の加点でも、打点を挙げたのは、フォーサイス、バーンズ、プイグの下位打線だ。ドジャースはこの試合で8得点(6打点)を挙げたが、そのうち5打点までもが下位打線の産物だった。一方のダイヤモンドバックスは、代打ブランドン・ドルーリーが7回表に放った3ラン以外は、下位打線が打点を記録していない。

第3戦でも8回に登板し、ドジャース3連勝を呼んだ。

 短期決戦では、こういう点の取り方(あるいは取られ方)が勝敗を分かつ。とくに第2戦から第4戦(5戦勝負の場合)の間にこれが起こると、点を取ったほうは俄然勢いづく。モメンタムに乗って、一気に勝ち上がるケースが少なくない。

 前田健太の第3戦での好投も、その証明といえるかもしれない。セットアップとして8回裏に登板した前田は、ポロックを三振、ダニエル・デスカルソを三ゴロ、クリス・アイアネッタを三振に討ち取り、ドジャースに3連勝を呼び込んだのだった。

 ドジャースは、これでかなり楽になった。10月10日現在、NLCSの相手はまだわからないが、カブスが来てもナショナルズが来ても、疲労度の面ではドジャースがかなり優位に立てる。クレイトン・カーショーとダルビッシュが本来の能力を発揮し、前田やバーンズやフォーサイスといった脇役が調子の波に乗れば、1988年以来のワールドシリーズ制覇も夢ではない。ア・リーグ優勢の下馬評を覆すとしたら、9月の苦境を乗り切って勝ち方を思い出したドジャースが、やはり一番手に挙げられるのではないか。

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