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ついに覚醒、杉本健勇の原点って?
最強のマルチロールが万能型FWに。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2017/08/31 07:00
育成年代の頃から将来を嘱望されてきたストライカー。最終予選ラスト2試合で「杉本健勇」の名を日本中に知らしめる時が来た。
最終ラインで無失点、延長戦ではFWとして決勝点。
そんな“マルチロール・杉本健勇”について、今でも印象に残っている試合が2つある。
まず2009年の日本クラブユース選手権準々決勝・C大阪U-18vs.横浜FMユースだ。
C大阪U-18は、守勢に回ることが多かった。横浜FMユースは小野裕二(現・鳥栖)らタレントぞろいだったが、センターバックの杉本はどっしりと構え、的確なコーチングと鋭い寄せで、ゴールを許さなかった。
スコアレスのまま迎えた延長戦。杉本はセンターバックからFWにポジションを移す。つまり、得点を奪いに行く役割を担った。
その期待に応えたのは107分のことだった。右サイドにボールが展開された瞬間、彼はゴール前に空いたスペースを見つけると、一度DFの視界から消えてから一気に加速。ピンポイントクロスを右足インサイドで器用に合わせたのだ。
杉本の技ありのダイレクトシュートが決勝点となり準決勝に進出。勢いに乗ったC大阪U-18は一気に頂点まで駆け上がった。攻守にわたって大車輪の活躍を見せた杉本は、文句なしで大会MVPを獲得した。
ネイマールがいたブラジル相手にもファインゴール。
その後臨んだU-17W杯のブラジル戦では、FWとして大きなインパクトを残した。当時から注目株だったネイマールにゴールを奪われるなど、日本は1-2とリードを許す展開となった。しかし84分、杉本は後方からのパスを右足アウトサイドのトラップで収め、スピードを落とさず冷静に同点ゴールを叩き込んだのだ。
試合こそ終了間際にブラジルに勝ち越され、2-3で敗れた。しかし杉本自身は「絶妙なトラップができて、前に行くことができた。理想どおりのプレーでした」と自画自賛したゴールによって、改めてストライカーとしての能力の高さを示したのだった。
「もちろんFWが一番やりやすいし、やっぱりゴールを決めることが大好きなので、一番楽しいです。でも、これまでやったどのポジションもそれぞれ楽しいと思えたし、FWとしてCBやサイドプレーヤーの意図や狙いが分かるので、より判断やプレーの選択肢が増えたと思います。やって来て良かったと思いますね」