マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
「練習は嘘をつかない」は嘘だ。
花咲徳栄の練習場で見た本物の実戦。
posted2017/08/28 08:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
祭りが終わった。
埼玉代表・花咲徳栄高の強さは圧倒的だった。
甲子園での6試合、すべての試合で2ケタ安打を放って合計80安打をマーク。すべての試合で9点以上の大量点を奪って合計61得点をあげて、まさにチームがテーマに挙げていたという“破壊力”をその表現のまま、甲子園のグラウンドで存分に体現してみせた。
その通り、この夏の花咲徳栄の強さはこの破壊力に他ならないだろう。
本塁打2、三塁打5、そして二塁打にいたっては21本をマークして、80安打のうち、長打は28本に及んだ。
ならば、なぜ花咲徳栄の打者たちは、この甲子園という大舞台でこれだけの長打力を発揮できたのか。
それはまず最初に、花咲徳栄の打線に居並ぶ強打者たちの身体能力のすばらしさを挙げねばならない。
この大会、多くのチームが2ケタ番号の選手を多く繰り出した“総力戦”で戦いに臨んでいた中、花咲徳栄は、綱脇彗投手、清水達也投手の“黄金リレー”を行なっただけで、8人の野手については全員がいっさい交代することなく、6試合ともフルイニング出場を果たした。
それだけ絶対的存在の野手たちだけに、おそらく近い将来、8人のほとんどがプロ球界に進んでいるはず……そんな予感が伝わってくるほどの高い能力を持ったチームだった。
花咲徳栄は普段、どんな練習をしているのか。
そしてそれ以上に今年の花咲徳栄には、この夏の“大きな成果”を予感させる要素があった。
思い出した場面がある。
この春から夏の予選前にかけて、何度か花咲徳栄の練習グラウンドにうかがう機会があった。
取材相手の選手に会うことも楽しみだったが、それ以外にも、今年の花咲徳栄には興味をそそられる選手たちが何人もいた。そしてさらに、浦和学院をはじめとして強豪居並ぶ埼玉で、コンスタントにいつも大会の上位に勝ち上がってくる花咲徳栄というチームが、いったいどんな練習をしているのか……。興味は尽きなかった。