野球善哉BACK NUMBER
優勝校に負け続ける屈辱を経て……。
花咲徳栄、初回の猛攻撃で勝つ!
posted2017/08/19 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
初回から沸き立つ三塁側ベンチの盛り上がりに、花咲徳栄ナインのこの試合にかける意気込みが伝わって来た。
第11日第2試合の花咲徳栄vs.前橋育英の一戦。
1回表、1死二塁から3番の西川愛也(まなや)は左中間を突破するタイムリースリーベースを放って三塁に到達すると、大きなガッツポーズをとった。沸き立つベンチとともに先制点がもたらす意味を噛みしめているようだった。
3年連続となる夏の甲子園出場の花咲徳栄にとって、この試合が持つ意味は大きかった。それは1つに、対戦相手の前橋育英が優勝候補の一角であったということもあるが、チームがより成長する上でのターニングポイントとなる試合だと位置付けていたからでもあった。
それは主将の千丸剛のコメントからも分かる。
「去年は先輩と一緒に戦わせてもらったんですけど、同じ関東の高校に負けて、そのチームが優勝した。先輩の悔しい想いを晴らしたいんです」
優勝校に敗れはしたが、その実力は僅差だった……。
ここ2年、花咲徳栄は関東対決、それも甲子園の優勝校に敗れてきていた。
2015年は東海大相模。
2016年は作新学院。
両校と互角に渡り合いながらも、あと一歩のところで及ばなかったのである。監督の岩井隆は、前橋育英戦の持つ意味を、試合前、こう話していた。
「過去2年の優勝校との対戦では、全く歯が立たないという試合をしてきたわけじゃなかった。コンマ何センチとか、数秒の差……みたいな負けでした。試合の流れによっては何とかできた。それだけに今日は攻めまくるしかないと思っています」
あの初回の先制攻撃の裏側には、そんなチームの想いがあったのだ。