マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
プロアマ協定がない分、より熾烈?
大学野球部が狙う高校生の条件は。
posted2017/08/05 11:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Hideki Sugiyama
7月の高校野球は、言うまでもなく8月の甲子園大会の各都道府県予選だ。
多い日には、全国で100試合以上の予選が行なわれ、試合の数と同じだけのチームが姿を消す。
ネット裏には、熱心なファンに混じってプロ野球のスカウトたちが、その素質に惚れ込んでここまで1年、2年と追いかけてきた選手たちの成長ぷりの、最後の確認にやって来ている。
グラウンドでの戦いも熱いが、熱戦を見守るスタンドにも、もう一つの“熱い闘い”が人知れず展開されているのだ。
予選をネット裏ではない場所で見つめる大学の監督。
その予選の球場で、こんなことがあった。
最初の試合が終わって、次の試合の“背番号8”がお目当ての選手だった。
試合が始まると、外野手のスローイングを見られる機会が少ない。キャッチボールの初球をどのぐらい丁寧に投げ始めるのか。前の足にどれぐらい乗っかった遠投ができるのか。近くで見たくてスタンドを外野の方へ歩いていくと、スタンドの上の方から、声をかけられた。
見上げると、サングラスに帽子、首にタオルを巻いて、こっちを見下ろしてニコニコ笑っている。
人相はさだかではなくても“匂い”でわかる。ある大学の、監督である。
なんでそんなところで……? と訊くと、「皆さんのおじゃまをしちゃいけないから」と、ネット裏を指差している。狙っている選手が、プロ野球スカウトたちと重なっているのだ。