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藤井聡太四段を渡辺明竜王はどう見る?
「野球で言うと高卒1年目3割30本」
text by
稲田修一(Number編集部)Shuichi Inada
photograph byAsami Enomoto
posted2017/07/31 08:00
初代永世竜王、そして永世棋王でもある渡辺氏。屈指の実力を持つ棋士だからこそ語れる“藤井聡太論”がある。
「今の成長曲線で行けば羽生さんと同じくらいまで……」
「当然、今の時点での藤井君の評価は定まっていません。これまでの対戦相手は四、五段の棋士が多く、早指し棋戦(持ち時間の短い対局。実力を計りにくいとされる)も多いです。いわゆるトップクラスとの公式戦はまだ5局くらいですから、評価として不透明な部分はあります。あと20、30局のサンプルは見たいなとは思います」
「どのくらいの棋士になるのか、ある程度分かるようになるのは3年後くらいじゃないですか? 今の成長曲線で行けば羽生さんと同じくらいまで達すると思いますけど、まだ推測や期待の域を出ないです」
競馬、野球、サッカー、どんなふうにも論じられる。
そして期待どおり、スポーツにたとえての説明がとても分かりやすく、ユニークな視点のものだった。
競馬だと「買うなら『数十年に1人の天才』というオッズが人気になるのは当然です」。
野球だと、「プロ野球にたとえるなら並の新人王の成績では当然なくて、高卒で3割30本を超えるレベルです。2割8分20本程度じゃない」。
そしてサッカーにたとえると、藤井将棋は「サッカー選手のポジションで言えば『8番』のような前線の攻撃型の選手」だというが、それだけにはとどまらないようだ。1つの結論としては、「いろんなふうに論じることが出来る」将棋であり、「時代の流れを象徴している」将棋なのだという。
まだ中学生の後進に対して、褒めるべきところは率直に褒め、今後の成長を期待し、将来の対戦について楽しみだと、清々しく語ってくれた渡辺竜王。夕方頃に取材が終わると、「これから大井競馬場に行ってきます」と、笑顔で去って行った。