オリンピックPRESSBACK NUMBER
18歳サニブラウンの持つコメント力。
世界選手権で今度は何をしゃべる?
posted2017/06/26 17:15
text by
別府響(Number編集部)Hibiki Beppu
photograph by
Takashi Shimizu
「『勝たなきゃ』という想いで緊張するのはわかるんですけど、一番大事な“レースを楽しむ気持ち”を忘れるのはいけないのかなと。楽しむ気持ちが、一番大事だと思います」
その言葉の通り、18歳の青年は終始楽しげだった。
6月23日から25日まで大阪・長居陸上競技場で行われた陸上の日本選手権。初日から最終日までサニブラウン・アブデルハキーム(東京陸協)の一人舞台だった。
10秒0台の自己ベストを持つ選手が5人もそろい“過去最高レベル”と言われた100mを雨中にもかかわらず10秒05の自己ベストで制すると、翌日の200mも20秒32で圧勝。2003年の末續慎吾以来、14年ぶりの短距離2冠を達成してみせた。
その圧倒的な実力もさることながら、目を引いたのは18歳とは思えぬ秀逸なコメントぶりだった。
日本選手権前は、絶不調だったサニブラウンだが……。
「ちょっと雨で、9秒台をお見せすることができなかったんですけど――」
100mのレース後には、悪天候の中、観戦に訪れた2万人を超えるファンたちに、9秒台を見せられなかったと申し訳なさそうに一言。
「出せなかった」ではなく「お見せすることができなかった」と言うあたりに、プロ意識が滲みでる。これだけハイレベルな争いを制し、初優勝。しかもまだ18歳だ。それでも浮かれることなく、まずファンのことを気にする……大物感が満載である。
また、翌日の200mを制した後のミックスゾーンではこんな一幕もあった。
実はサニブラウンは日本選手権の前に出場したオランダでの200mレースでは、21秒10の7位と絶不調。その状態からどうやって立て直したのか? という質問が記者からでると、18歳はニヤッと笑うと軽妙にこんな一言を返してきた。
「その質問、待ってました~!」