濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“普通の試合”で特大インパクト!
K-1・武尊が示したスターの証。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2017/06/22 11:00
現在保持している「K-1 WORLD GPフェザー級王座」の初防衛戦が待たれる武尊。
武尊は相手の体重超過を盛り上がりに変えた。
そしてもう1人、観客の心を完璧に掴んでみせたのが武尊だ。
対戦相手のブバイサ・パスハエフは初参戦、言ってしまえば“知らない外国人”との試合であり“顔見せマッチ”とも思われかねない。
大会前日、ブバイサは計量で規定体重を800gオーバーしている。ルールにより減点とグローブハンデのペナルティーが与えられることになった。だが、これを武尊が拒否し、協議の結果ペナルティーなしで試合が行なわれることに。
「体重オーバーは許せないけど、試合になったら体重は関係ない」というのが武尊の主張だった。さらにブバイサは、1ラウンド終了のゴング直後に攻撃して減点を喰らう。
荒れ放題で、スポーツとしては興ざめで、それでいてブバイサに実力があるから厄介だった。
“知らない外国人”が一気に注目の存在に。
もともと、パンチの重さは武尊も認めている。
減点分のポイント差による判定決着になりがちなパターンだ。真っ先に観客の記憶から消去されるタイプと言ってもいい。しかしそんなシチュエーションを、武尊はすべて“自分のもの”にしてしまった。
曰く「俺、持ってるなって思いました。ある意味では試練だけど、それを乗り越えて勝てば盛り上がりますから」。
ブバイサは計量と試合を通して、観客にとって“知らない外国人”から“体重オーバーした上に反則したヤツ”になっていたわけだ。しかも強さが伝わってきた。そういう相手を倒せば、当然のように盛り上がる。
最終3ラウンドに右フックでダウンを奪い、フィニッシュは左右のボディブロー。かくして、トーナメントでもタイトルマッチでもない試合がとんでもないインパクトを残すことになった。