濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“普通の試合”で特大インパクト!
K-1・武尊が示したスターの証。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byTakao Masaki
posted2017/06/22 11:00
現在保持している「K-1 WORLD GPフェザー級王座」の初防衛戦が待たれる武尊。
武尊の試合は、順当勝ちが“大逆転”に見える。
「さすが武尊」
「これぞエース」
多くのファンがそう思ったのではないか。
武尊は4月の試合でも、同じように初参戦の外国人と闘い、ローブローで大ダメージを負いながらKO勝ちしている。今回もそうだが、冷静に考えれば順当勝ちなのに、イメージとしては“大逆転”なのだ。
もちろん、そうなったのは「僕にとってK-1のKはKOのK」と言うほどのプロ意識と、それを現実のものにできる力量があればこそ。ただ、相手の体重オーバーや反則に怒るだけでなく「おいしい」と感じられる感性も大きいのではないか。
あらゆるアクシデントを「持ってる」に変える男。
スーパースターになる。
SPなしでは道を歩けないくらいの有名人になる。
数年前、武尊はそう決めて上京してきた。それが単なる夢ではなくなりつつある今でも“なりたい自分”、理想のファイター像を常に思い描いているのだろう。それが咄嗟の場面、つまり試合ぶりやコメントにも出る。
ローブローも体重オーバーもゴング後の攻撃も、そう珍しいアクシデントではない。
武尊が「持ってる」のは、劇的なことに出くわす運ではなく、なんでもないことを劇的に変えてしまう力なのだ。
それができる人間のことを、きっと“スター”と呼ぶのだろう。