リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
90分で5.8回相手を“完全に”かわす。
ネイマールのドリブルが異次元の域。
posted2017/05/11 11:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Getty Images
「サッカーの解釈と表現が他の選手だけでなく、他のブラジル人選手とも異なる。ウソのようなドリブルで相手を狂わせてしまう。ドリブルというより、バレエを踊っているかのように見えるときさえある。バルサのファンでない人はそう思えないだろうが、彼を観るのは楽しいよ。素晴らしく、プレイに無駄がなく、華やかな選手だ」
第36節のビジャレアル戦を4-1で快勝した後、ルイス・エンリケがこう称えたのはネイマールである。
'13年の夏に鳴り物入りでバルセロナにやってきた彼は、それ以来さすがのパフォーマンスを続けてきたが、ここ数カ月はレベルがさらに上がっている。チームの攻撃と試合の流れに対する影響力が、ブラジルのサントスにいた頃に匹敵するほどになっているのだ。
ワイドなポジションからゴール前へ侵入する。
覚醒のきっかけといえそうなのは、ルイス・エンリケが敢行した4-3-3から3-4-3へのフォーメーション変更である。
2月14日のCLパリSG戦第1レグを4-0という大差で落とし、直後のリーガでも数段格下のレガネス相手に苦戦したチームを見て、ルイス・エンリケは決断を下した。ブスケッツとメッシを中心に中盤が再構築され、サイドバックの位置取りと攻撃参加のタイミングも変わった。
おかげで、ネイマールのプレイエリアにも変化が生じた。
フォーメーション変更前と変更後のヒートマップを較べると、違いは歴然としている。たとえば1月の国王杯アスレティック戦では左サイドラインから9~18mほどの幅の帯上でプレイしていたネイマールだが、3-4-3での3試合目となったリーガのセルタ戦になると、自陣から敵陣半ばまではラインにべったり貼りつき、ペナルティエリア前まで来たところで中央へ向かって動いている。
いうならば、チームの戦術に沿ったポジショニングと、ボールとゴールを求める本能的なポジショニングの両立だ。