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オークランドで繰り広げられた、
“テニス選手”杉村太蔵、37歳の熱戦。
posted2017/05/11 11:20
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph by
Takuya Sugiyama
「もっとやっていたかった――」
試合を終えた帰り道、杉村太蔵はそう呟いた。
4月28日早朝、ワールドマスターズゲームズ2017でテニスのエキシビションマッチに出場するため、オークランドのオールバニー・テニスパークで、杉村太蔵は対戦相手の元プロテニス選手、ジェームス・グリーンホールの到着を待っていた。杉村は前日の朝に現地入りしたばかり。現地で練習する時間はなく、ぶっつけ本番で迎える試合。相手は全仏オープンやウィンブルドン出場経験もある地元の選手だ。その表情にはさすがに緊張が走っていた。
試合は制限時間20分。試合終了時点でのカウント、もしくは4ゲームを先取したほうが勝利となる特別ルールで行なわれた。
老練な試合運びを見せた対戦相手のジェームス。
第1ゲームのサーバーは杉村。
ところが生命線といっていた得意のサーブが決まらず、いきなりのダブルフォルト。その後もファーストサーブどころか、ストロークさえ決まらず、杉村ももどかしそうに首を傾げる。一時はデュースまで盛り返すも、結局このゲームを落とす。
続く第2ゲームも、勝負勘が戻らないのか、杉村はミスショットを連発。逆にプライベートでもワールドマスターズゲームズにエントリーし、既に数試合をこなしているジェームスは、前後左右にショットを打ち分け、杉村を翻弄。杉村は何もできないままラブゲームに終わった。
ところが第3ゲームに入ると、杉村の動きは一変。
得意のサーブにキレが戻り、サービスエースでみるみるポイントを稼ぎ、このゲームを獲得。第4ゲームでは、2度のデュースに持ち込まれるほどの接戦を繰り広げながらも見事ゲームを奪いかえし、カウントは2-2に。