球体とリズムBACK NUMBER
ハリル「プレッシャーは大好きだ」
監督業はマゾでなければ務まらない。
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/03/31 07:00
「世界で最も辛いのはブラジルの代表監督」というジョークも存在するほど、この職業は精神的なタフネスが必要なのだ。
久保が、香川が、岡崎が日頃の鍛錬を示した。
UAEに敵地で2-0、タイにホームで4-0。この2連勝で日本代表はグループで首位に立ち、ロシアへの視界がすっと開けた。
日本の選手たちは3月の連戦で、日々の鍛錬の違いを見せつけたと思う。たとえばUAEのエース、オマル・アブドゥルラフマンは母国のクラブにとどまって才能を伸ばしきれていない。タイは急激に力をつけているとはいえ、「まだまだこれからのチーム」(タイのキャティサック・セーナムアン監督)だし、国内リーグも同様だろう。
かたや、多くの日本代表選手は欧州のトップ戦線で研鑽を積んでいる。獲物を見据えるような目をした久保裕也はヘントでの好調を代表に持ち込み、2試合で2得点3アシストを記録して連勝の原動力となり、新たなエース候補に名乗りを挙げた。共に代表の公式戦では約1年ぶりにネットを揺らした香川真司と岡崎慎司も、ドルトムントとレスターでの復調を結果につなげている。
指揮官の賭けが的中した人選もあった。オフに入団したメスで今季、国内カップの1試合にしか出場していない川島永嗣と、約2年ぶりに代表に復帰した今野泰幸は、どちらも主役級の活躍を見せた。
「W杯予選は結果がすべて」と酒井宏樹はタイ戦の前日に言った。だとしたら、満点の結果を残したハリルホジッチ監督は褒められるべきだろう。闘争心や一体感といった、いつの時代のどんなチームにも必要なものは確実にもたらしている。
内容に不満を持った選手も多かったはずだ。
ただし、内容への不満を持つ人はメディアにもファンにもいるはずだ。守備的に傾きすぎた中盤の構成や、単調かつ一辺倒になりがちな攻撃、サイドのリスクマネジメントなど、首を傾げてしまう部分は確かにある。
選手たちにもその自覚はあるようで、タイ戦後のミックスゾーンに大勝の余韻に浸っている者はおらず、それぞれが感じた課題を口にしていた。