Number ExBACK NUMBER
“キタサン”冠名の誕生秘話。
北島三郎とこれまでの愛馬たち。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byKeiji Ishikawa
posted2016/12/22 11:40
ジャパンカップでのキタサンブラックと北島氏。獲得賞金がすでに9億5千万ほどになる同馬に、年末の国民の期待がかかる!
「もうたまらなくて、バーっと涙が出て……」
「ある日、桂小金治さんの番組(『それは秘密です!!』)のご対面のコーナーに呼ばれまして。その番組で『北島さんのご対面はこちらです』と真っ黒な幕がバーっと落ちたんですね。そしたら人ではなく、そこには馬がいたんですよ!
現役の時と同じくギラギラした大きな目で、私にはすぐに『リュウだ!』とわかりました。リュウがポコポコ歩いて私の方に来た時は、もうたまらなくて、バーッと涙が出て。『久しぶりだったな、元気だったか』と声をかけているうちに『それでは歌ってください』と『函館の女』の音がかかったんです。あの時ばかりは、泣きながら『函館の女』を歌っちゃいました(笑)」
“キタサン”の冠名は北島氏の父の言葉から。
北島さんが今まで持った馬は500頭以上。愛馬たちとのエピソードを語る口調は温かい。北島さん所有の馬といえば「キタサン」の冠名で知られる。
“キタサン”誕生の裏には北島さんの父の言葉があったという。
「リュウが引退した後は、いろんな名前を付けたんです。あるときうちの親父に『今日、うちの馬が勝ったよ』と伝えたら、『勝ったと言っても馬名がわからねえから、わかるようにしてくれ』と言われましてね。それで北島三郎の『北』と『三』をとって『キタサン』とするようになったんです」
走る馬も走らない馬もいたが、「やめようと思ったことは一度もなかった」。
1995年、キタサンサイレンスが桜花賞に出走し、所有馬が初めてGIに参戦。2001年にはキタサンチャンネルがニュージーランドT(GII)に優勝し、重賞初制覇。さらに同馬で、競馬の祭典「日本ダービー」にも出走した。
そして昨年、ついにキタサンブラックで菊花賞を制覇。
念願のGI制覇を果たしたのである。