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脱・金子専属で再び正捕手の座を。
オリ伊藤光、27歳で迎えた転換点。 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2016/11/22 07:00

脱・金子専属で再び正捕手の座を。オリ伊藤光、27歳で迎えた転換点。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

扇の要を任されれば、充実の表情を浮かべる。伊藤光にとっての本職はやはり、キャッチャーなのだ。

「自分はキャッチャーだ」というプライドは、ある。

 その日、伊藤はファーストの守備位置から金子のピッチングを見守った。

「後ろから見る金子さんというのは初めてなので、変な感じはしましたね。今までは常に正面から見ていたので……」

 複雑な思いはあっただろう。しかし1回表、引退試合となった小松聖がランナーを1人残し、その後マウンドに上がった金子にボール球が続くと、伊藤は真っ先にファーストからマウンドに歩み寄った。

「ランナーが出ている状況から行くというのは金子さんにとって何年もなかったこと。やっぱりリズムが違うのかなと感じたので、間(ま)を取るという意味で行きました。僕ができることはそれしかないので」

 どこを守っていようと、チームへの、投手への献身は変わらない。

 しかしやはり、捕手というポジションにはこだわりがある。

「自分はキャッチャーだと思っている。ファーストやDHで出ることに関しては別に問題だとは思っていなくて、それはそれでチームに貢献するチャンスです。でも、キャッチャーをやりたいんです」

ルーキーも獲得、オリックスの捕手争いはより熾烈に。

 一方、今年チーム最多の84試合でマスクを被った若月も、正捕手をつかんだとはまったく思っていない。ホーム最終戦のあと、「来年も光さんとの勝負になると思うので、しっかり頑張ります」と気を引き締めた。

 福良淳一監督は、「光はこのまま終わるわけにいかないだろうし、若月も、今年これだけ出たんだから渡したくないだろうし、いい競争になるんじゃないか」とほくそ笑む。フェニックス・リーグではできるだけ2人を交互に起用するよう田口壮二軍監督に要望したという。

 鈴木バッテリーコーチも、「誰がレギュラーというのは今決まっていない。2人には競争してもらいたいし、他のキャッチャーにもチャンスはある」と話す。投手からの信頼厚いベテラン捕手の山崎勝己もまだまだ健在で、打力が魅力の伏見寅威も、「何でもいいから試合に出たいと思う時期もあったけど、今年、ファースト、サードで出て、やっぱりキャッチャーでやりたいと思った」と意欲を見せる。今年のドラフトではHonda鈴鹿の飯田大祐も獲得した。

 来年、誰が正捕手の座を手に入れるのか。それが、今季最下位に終わったチームの浮上の鍵も握ることになる。

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