プロ野球亭日乗BACK NUMBER
阿部慎之助、内海哲也、山口鉄也。
巨人の生命線はDeNAには無い「経験」!
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2016/10/08 07:00
防御率1位の菅野智之が先発できないことは、巨人にとっては大きな痛手に違いない。エースの復帰を待つ事ができるか。
マシソンと山口で流れを作れば澤村の復活も。
長年の勤続疲労から今季の山口は往年のボールのキレを失い、大事な場面で痛打を浴びるケースも見られた。シーズン終盤にはセットアッパーから、左のワンポイント的な役割を担うケースが増えていた。
逆に言えばこの山口の不振が、そのままチームの成績に反映しているとも言え、結果的には未だに山口に代わる存在がいないということでもある。ならば、この短期決戦ではもう一度、山口の経験と集中したときの底力にかけてみるというのもありではないか。
現代野球では、セットアッパーが試合の流れのカギを握るというのは常識である。8回をピシャリと3人で片づけ、いいリズムでクローザーに繋げば、クローザーもその波に乗ってゲームを締めくくれる。
スコット・マシソン投手と山口をうまく併用して、そういう流れを作り出せば、不安定だった澤村のピッチングにも変化を与えることができるかもしれない。
ベテランの力が短期決戦では物を言う。
1989年の近鉄と対戦した日本シリーズ。いきなり3連敗した巨人の藤田元司監督は、第4戦の先発メンバーに「1番・右翼」でベテランの蓑田浩二外野手を抜擢した。蓑田はシーズン中、わずか37試合の出場で打率2割4分1厘だった。しかし試合が始まると、初回に蓑田が放った二塁打を足場に先制点を奪って、巨人はシリーズ初勝利。そこから4連勝して日本一に輝いた。
ベテランは肉体的にもコンディション的にも、長いシーズンを通じてコンスタントに成績を残すのが難しくなっていく。ただ短い期間に合わせて、きちっと調子を高めて短期的に自分の持てる力をフルに発揮するのには長けている。短期決戦で大事なのは、シーズン中の結果はリセットして、改めてこういうベテランの力をどう引き出して勝利に結びつけるかでもあるのだ。
巨人にとっては逆境のクライマックスシリーズ。だからこそそういうベテランの力がカギを握るのである。