野球のぼせもんBACK NUMBER
天敵ロッテ撃破で得意の札幌へ――。
SB柳田復帰で描くCS逆襲の青写真。
posted2016/10/07 07:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Hideki Sugiyama
あえて「謝罪」は口にしなかった。
9月30日、本拠地最終戦後のセレモニーでマイクの前に立った工藤公康監督は、スタンドを見渡しながら次のように述べた。
「シーズンの結果は2位という成績に終わりましたが、我々の戦いは、これからです。ファーストステージ、ファイナルステージを勝って、最終的な目標は日本一V3です。この偉業ともいえる3連覇を成すべく、キャンプからみんな血のにじむような努力をし、懸命に頑張り、熱く戦ってきました。この目標をぜひ、ファンの皆さんの前で達成すべく、これから一生懸命頑張っていきたいと思います」
スタンドからは「そうだ」や「まだ終わってないぞ」の声が飛ぶ一方で、筆者の傍にいた地元福岡の放送メディア関係者は「なんだよ。『優勝できずにスミマセンでした』じゃないのか」と毒づいた。野球メディアの世界はどういうわけか、新聞番記者よりもテレビ局のディレクターの方が担当球団への愛情が深い(特に上位常連チームにその傾向が見られる)。だから文句の一つも言いたくなるのは分からなくもない。
なにせ最大11.5差をひっくり返されたのだ。球史に残るV逸である。
「修正できなかった」と工藤監督は悔いを見せた。
ただ、ファンには「悔い」を見せなかった工藤監督だが、その後ベンチ裏で行われた囲み取材での姿は違った。厳しい表情を浮かべ、大きな目をきょろきょろと動かしながら率直な思いを吐きだした。
「僕自身が修正できなかった」
「迷った部分があった」
「反省している」
「悔やまれる」
だからこそグラウンドで見せた、ただひたすら「前だけ」を向いた言葉に強い決意と心意気を感じ取ることが出来たのだ。反省は大事だ。だけど過去を悔いたり振り返ったりするのはまだ早い。
リーグ3連覇は逃したが、3年連続日本一の夢はまだ道半ばだ。