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「王道」初優勝から「三冠」へ――。
全日本プロレス、無骨な王者・諏訪魔。 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2016/09/26 07:00

「王道」初優勝から「三冠」へ――。全日本プロレス、無骨な王者・諏訪魔。<Number Web> photograph by Essei Hara

「王道トーナメント」のトロフィーを抱きしめる諏訪魔。頑丈な身体と心を持つ優しきプロレスラーは、どういう方法で全日の栄光を取り戻すつもりなのか?

三冠王者に復帰直後、まさかのアキレス腱断裂。

 今年1月には5度目の三冠王者に返り咲いたのに、まさかの右アキレス腱断裂で王座の返上を余儀なくされた。

 手術とリハビリ後、7月にリング復帰を果たしたが、半年間のブランクは、諏訪魔も身をもって実感するしかなかった。

 ジャンボ鶴田並みと言われた無尽蔵のスタミナもまだ不十分で、足も細くなった。上半身の筋肉の戻りは早いが、足の戻りは遅い。諏訪魔の体が本調子に戻るには、まだ時間がかかるのは明白だった。

 それでも、「王道トーナメント」1回戦では意地で、若い三冠王者の宮原健斗に勝って、決勝までコマを進めたのだった。

全日本プロレスの過去の栄光に、言い訳はできない。

 はっきり言って、現在の全日本プロレスの人気は横ばいだ。

 それは秋山潤(準)社長もよく理解し、危惧していることである。

 かつて……いやそんな昔の話ではないが、蔵前国技館、両国国技館、日本武道館は、全日本プロレスの興行で大入り満員になって揺れていた。会場のてっぺんまで鈴なりにぎっしり入った観衆が全日本プロレスのスタイルに熱狂し、大声援を送っていたのだ。

 ジャイアント馬場、ジャンボ鶴田、天龍源一郎の時代。

 スタン・ハンセンやブルーザー・ブロディの時代。

 三沢光晴、小橋健太、川田利明、田上明らの四天王時代。

 栄光の時代のことを考えると、現在の全日本プロレスの危機的状況には、言い訳の余地がない。

 せっかくいい試合をして、体の大きい有望なレスラーがいるのに――ファンの吸引力に欠けているのだから。

 「王道トーナメント」の“決勝”にもかかわらず、後楽園ホールに1183人(主催者発表)しか集められない現実を、全日本プロレスは厳しく受け止める必要がある。

 諏訪魔が圧倒的な強さを見せつけていたときですら、そうだった。諏訪魔もそれに危機感を抱いて、理解しているつもりだったし、言及したこともある。

 効果的な打開策は見つからなかった。

 もしそれが解決策になっていなくても、なんと言われようとも、リングで体を張って無骨に強く戦うしかなかった。

【次ページ】 宮原の若さとバネ、諏訪魔の無骨な強さが激突!

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