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“プロ”も恐れるワンメイクレース!?
86/BRZレースの底しれぬ魅力。
posted2016/08/10 17:40
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph by
TOYOTA
かつては国内トップドライバーとして第一線で戦い、F1グランプリやインディカーレースにも出場した経験のある服部尚貴は現在、スーパーGTなどで裏方として日本のレース界を支える立場にあるが、一方ではレーシングドライバーとしてステアリングを握り続けてもいる。その服部が今、“ガチ”で取り組んでいるレース、それが86/BRZレースだ。
86/BRZレースは、TOYOTA 86及びSUBARU BRZのワンメイクレースである。競技用に販売される車両には登録ナンバープレートがついているので、日常は乗用車として使い、競技ライセンスさえあれば、そのままサーキットへ乗り付けてレースを戦うことが可能だ。
86/BRZレースはもともと、レース初心者向けのカテゴリーとして2013年に始まったが、プロ選手の参戦が相次ぎ、現役スーパーGTドライバーの谷口信輝、織戸学、青木孝行、井口卓人、蒲生尚弥やかつて国内トップドライバーとして活躍した服部尚貴、羽根幸浩、山田英二らがエントリーリストに名を連ねるに至った。どうして初心者向けカテゴリーにプロが参入したのか。
「おもしろいクルマだなと感じていた」
「シリーズが始まるとき、谷口(信輝)が『出ようと思っている』と言うのを聞いて、『え? それって、楽しそうだな』と思ったんです」と服部は自身がシリーズ参戦に至ったきっかけを語る。
「その前に、仕事で86/BRZをサーキットで走らせる機会があって、おもしろいクルマだなと感じていたんです。それで、レースに出たいなと思っていたら、たまたま出ないか、という話があって、参戦することになったんです」
レーシングカーの最高峰であるF1グランプリカーにまで乗った服部は、TOYOTA 86/ SUBARU BRZのどこに「おもしろさ」と感じたのだろうか。
「クルマって、動力性能とコーナリング性能のバランスがあってこそ良いクルマなんです。パワーだけあっても仕方がない。86/BRZは、けっしてパワーが有り余っているわけではないけれどバランスがとれている。だから、うまく減速してうまく曲げてうまく加速するという、クルマを速く走らせるための基本テクニックが問われるんです。レースはスピードが速くてパワーが大きければおもしろいというものではないんです」