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“プロ”も恐れるワンメイクレース!?
86/BRZレースの底しれぬ魅力。
text by
大串信Makoto Ogushi
photograph byTOYOTA
posted2016/08/10 17:40
レース中のTOYOT86たち。注目して欲しいのは、すべてのクルマに一般公道用のナンバープレーとが付いていること!
丁寧に運転すればするほど速くなるのが86。
体力の限界、性能の限界を追求するトップカテゴリーの競技車両と異なり、自分の基本ドライビングテクニックだけを抽出し、初心に戻ってレースを戦える点に、服部をはじめプロ選手たちは楽しさを見いだしたのだろう。
「このクルマは、コーナーに入るとき、いわゆるターンインのブレーキコントロールが難しいんです。ブレーキを我慢してコーナーの奥に突っ込むより、ABS(アンチロックブレーキシステム)が利くか利かないかの限界を探りながら、限界の手前、ちょうどいいところでやめて、立ち上がりで加速できるようにもっていくと速く走れます。
慣れない初心者には、頑張りすぎてプロより奥まで突っ込んでいるような人が見受けられますが、本当は繊細でていねいな走り方をしたほうがいいタイムで走れるんです」
「アマチュアでも速い。気を抜いたら負けます」
86/BRZレースは2015年から、プロ選手が参戦できるプロフェッショナルシリーズと、アマチュアドライバーしか参加できないクラブマンシリーズの2シリーズ制となった。服部たちプロ選手が参戦するのはプロフェッショナルシリーズである。
しかしプロ選手がクラブマンシリーズに参戦できないのに対し、プロフェッショナルシリーズにはアマチュア選手の参戦が許されているため、服部たちは腕に自慢のアマチュアたちとも戦うことになる。
「アマチュアがプロと同じ土俵で戦えるという楽しさもありますね。コーナリングGが3Gを超えるようなクルマだと、正直プロとアマでは明らかに差が出ますが、86/BRZは、頭を使ってきれいに走らせないといけないクルマなのでプロとアマの差が出にくいんです。
アマチュアのドライバーは速いです。ぼくたちはアマチュアに負けるわけにはいかないので本気ですよ。気を抜いたら負けます。仲間内では、なめていたらケガするレースだよ、と言ってます。身体のケガではなくて、心のケガですね(笑)。
ナンバーがついた普通のクルマを使った入門用カテゴリーとして生まれたのに、今や『下手すれば痛い目にあう』と、プロも恐れる熱いカテゴリーに育ちましたね」と、服部は笑う。
「将来的にはクラブマンシリーズからプロフェッショナルシリーズへ挑戦して、その次にはスーパーGTに挑戦できるようなステップアップ経路が確立したらいいですね」