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和氣慎吾の残酷な結果に思うこと。
やはり世界戦とは、こうでなくては。

posted2016/07/22 11:20

 
和氣慎吾の残酷な結果に思うこと。やはり世界戦とは、こうでなくては。<Number Web> photograph by Kyodo News

「世界王者は通過点」というボクサーが増えて感覚が麻痺しつつあるが、プロ10年目で初挑戦を掴んだ和氣にとって、そこはまさに晴れ舞台だった。

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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 エディオンアリーナ大阪で20日に行われたダブル世界タイトルマッチは、WBA世界フライ級王者の井岡一翔(井岡)が順当に防衛テープを伸ばした一方で、IBF世界スーパーバンタム級王座決定戦に臨んだ“リーゼントボクサー”和氣慎吾(古口)は健闘むなしく、ジョナタン・グスマン(ドミニカ共和国)の強打に散った。計4度のダウンを喫した末の11回TKO負けだった。

 自慢のリーゼントヘアーは跡形もなく、優男風の涼しげなマスクは無残にも変形した。「和氣慎吾がついにこの世に出る」。試合前、そう語っていた28歳の野望は、残酷なまでに打ち砕かれた。

 控え室に戻った和氣は、取材を受けず病院への直行を手配しようとしたスタッフを押しとどめ、控え室に記者を招き入れた。パイプ椅子に座った敗者が語り始めた。

「結果がすべてです。見てください、この無様な顔を。これが結果です。オレより相手がすべて上回っていた。それだけです」

試合前の会長の涙、リング上で土下座した和氣。

 '90年代のカリスマの一人、鬼塚勝也を世界王者に育て上げ、何度も大舞台を踏んできた古口哲会長が愛弟子を気遣った。

「あの展開からよく盛り返して、左ストレートを効かせたよ。気持ちが強くなったじゃないか」

 和氣の表情がゆがみ「会長、すいませんでした」と言葉を絞り出すと、あとは古口会長の両手を握りしめ、号泣するしかなかった。ゴング直前、君が代を聞きながら目に涙を光らせた古口会長が報道陣に頭を下げ、短い記者会見を終わらせた。

 古口会長の涙、リング上で土下座した和氣の落胆ぶりを目にし、かつて日本で開催されたあまたの世界タイトルマッチを思い出した。世界戦に人生のすべてをかけ、命がけでリングに上がり、そして海外の強豪にあえなくはね返されてしまったボクサーたちの無念を─―。

【次ページ】 かつて、21回連続世界戦で負けた日本の歴史。

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