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UFCでハントvs.レスナーが実現!
4000億円買収劇に漂う格闘ロマン。
posted2016/07/16 07:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Getty Images
「こういうファンタジックなところが、まだ残ってるんですよね、ヘビー級には――」
世界最大のMMAイベント、その記念大会である『UFC200』(7月9日、ネバダ州ラスベガス・Tモバイルアリーナ)。インターネット中継の解説を務めた高阪剛は、感慨深げにつぶやいた。この大会で行なわれたブロック・レスナーvsマーク・ハントの一戦は、世界中から強豪が集い、リアリズムの極致とも言える闘いを展開するUFCにあって“ロマン”や“幻想”を濃厚に感じさせてくれるものだったのだ。
マーク・ハントのことを「やけに打たれ強いK-1チャンピオン」として記憶している人は多いだろう。ただ、いまから思うとK-1での活躍は、彼のキャリアの“初期”でしかなかった。2004年からはPRIDEに参戦し、'10年にはPRIDEを買収したUFCへ。
42歳でも第一線のハントが感じさせるロマンと幻想。
当時のハントは、トップ選手との対戦が続いたこともあって5連敗中だった。UFC初戦でも一本負けを喫している。しかしその後、組み技の技術が向上したこともあって結果を残すようになり、ヘビー級ランキングに名を連ねる人気選手へと変貌した。UFCでも、持ち味は有無を言わさぬパンチでのKO。勝っても負けても判定決着は極端に少ない。
愛嬌のあるキャラクターもあって、人気が出ないほうがおかしいとも思えるのだが、しかし「2001年にK-1ワールドGPで優勝したハントが'16年、42歳でUFCのトップ戦線にいる」なんて、誰も予想できなかったはずだ。
ファイトスタイルだけでなく、格闘技人生そのものがロマンの塊。そんなハントが、『UFC200』という記念大会に出場することになった。対戦相手として発表されたのはレスナー。彼もまた、ロマンと幻想を凝縮したようなファイターだ。
学生時代は国内トップレベルのレスリング選手。プロレスラーとしてデビューすると、世界最大の団体WWEでトップを張った。191cmの巨体にもかかわらず動きは俊敏、なおかつレスリングのベースもあるのだから何もかもが規格外だ。