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モハメド・アリ、その数奇な人生。
不遜で、派手で、誰よりも魅力的。 

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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photograph byGetty Images

posted2016/06/16 07:00

モハメド・アリ、その数奇な人生。不遜で、派手で、誰よりも魅力的。<Number Web> photograph by Getty Images

5本の指を見せKOのラウンドを予告するモハメド・アリ。実際、この試合は5ラウンドでのKO勝利を収めた。

虚実が入り混じった、稀代のボクサー。

 アリは全盛期に美しいボクシングでファンを魅了したとすれば、キャリア後期は、勝利に対する不屈の精神でファンの心をとらえたと言えるかもしれない。ちなみにチャック・ウェプナー戦は'75年の3月。この試合を見た無名俳優のシルベスタ・スタローンが映画「ロッキー」の脚本を描き下ろし、アカデミー作品賞を受賞したのも、知る人の多いエピソードであろう。

 日本でアリを直接取材した数少ない日本人ライターの一人である佐瀬稔氏(故人)が1983年の「ゴング・ワールド・ボクシング」でアリの人がらについて記している。

「アリが魅力的なのは、キンシャサやモスクワでの憂鬱を、いとも正直にしゃべっちまうことである。練習見物の群集の前で、20分も30分も、愛や平和、神の心について語り続けたあと、彼はポロリと、『ケンタッキーに帰りたいよお』とカシアス・マーセラス・クレイに戻るのだ」

 アリ伝説の1つに、オリンピックで金メダルを獲得したあと、白人専用のレストランに入店を拒否され、怒りに任せて金メダルをオハイオ川に投げ捨てた、というエピソードがある。

 これをいまだ事実として紹介するメディアがあったが、ルイビルのアリ・センター内の説明書きは「金メダルを川に捨てたのはフィクションだが、アリの怒りは本物だった」。虚像と実像の入り混じった稀代のボクサーが、波乱の生涯に幕を閉じた。

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