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ホンダ・中上貴晶が今季初の表彰台。
MotoGPシート獲得への条件とは?
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2016/06/11 11:00
3位入賞によって、中上は全35ライダーのうちで今季ランキングが7位に上昇(6月6日現在)。
日本人ライダーのライバルがいない、という不運。
その強い気持ちを引き出す要素のひとつに同じ国出身のライバルの存在がある。
1990年代から2000年代に掛けての日本人全盛時代を支えた理由のひとつに、「あいつには負けたくない」という同国人ライバルの存在があったのは間違いない。
それは日本人選手に限らず、スペインやイタリアなど、同じ国の選手たちがひとつの時代を築きあげていく時に、共通して見られる現象でもある。
Moto2クラスに参戦する日本人は中上ひとり。
「あいつだけには負けたくない」という動機付けが期待できないだけに、個人としての強い気持ちがより一層必要になる。
これは、簡単なようでいて、実に難しい課題でもあるのだ。
下からの突き上げも「卒業」を急ぐ要因に。
中上は、今年24歳。
ホンダのライダー育成構想の中で、彼を脅かす存在はいない。
しかし、アジアタレントカップやFIM・CEVレプソル国際選手権でホンダがサポートしている若い選手が着実に成長しているだけに、中上の言葉通り、「Moto2クラス卒業」の時期は、いろんな意味で刻々と迫っていることになる。
それ以上に、ホンダの日本人選手MotoGPクラス参戦の歴史は、2009年の250ccチャンピオンで'10年から('14年まで)MotoGPクラスに参戦した青山博一を最後に空白時代が続いていることが気にかかる。
'11年のステファン・ブラドル、'12年のマルク・マルケス、'13年のポル・エスパルガロ、'14年のティト・ラバトと、Moto2クラスでタイトルを獲得した選手と中上は10代のころに一緒に戦っている。
中上のMotoGP挑戦というプランは、我々が思う以上に現実味あるものだ。
そういった大きなチャンスの中にいる、ということを、中上自身がいま以上に強く自覚しなければならない。