野球善哉BACK NUMBER
西武には、やはり鬼崎裕司が必要だ。
その左眼は常に前だけを見ている。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byMatsumoto Kiichi
posted2016/05/28 11:00
100試合に出場したのは2013年の一度だけ。今季は再び3ケタペースで出場を重ねている。
「這い上がってきたという風には思ってない」
筆者は同じ眼だからおおよその症状は分かるが、日常生活に問題はなくても、プロのレベルで野球をするにはハンデになるはずだ。
だが鬼崎は「本当に、見た目が変だと思われるくらいで、僕には普通」といってのけた。そのポジティブな彼の思考は、チームの中で失いかけた自身の領域を再び取り戻した心の強さともつながっているように見える。
トレード先のチームでなんとか獲得したレギュラーをケガで失い、今季はタイムリーエラーで二軍落ち。それでもこうして這い上がり、チームにとって必要なピースとして、改めて首脳陣から評価されている。
「自分では這い上がってきたという風には思っていないですね。常にレギュラーをつかみ取っていかないといけない立場だし、そのためにもっともっと野球をうまくなっていかないといけない。その想いだけですよ」
今ある現実に対しての心の置き方で人生は大きく変わる。鬼崎は嘆くことなく、目の前にある現実を受けとめ、ただ前だけを見据えている。
人よりも少し視界が狭い、その左眼を苦にすることなく。