マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
走っても、守っても、打っても天才。
日本ハム・淺間大基の高校伝説。
posted2016/05/27 10:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
群馬県で行われている春季高校野球・関東大会へ行って来た。
22日の日曜日、高崎・城南球場で行われた横浜高対健大高崎高の一戦には、1万人近い観衆が集まった。
試合開始にまだ1時間以上もあろうかというのに、すでにネット裏と内野スタンドはあらかた観客で埋まり、さらに入場券を求めるファンたちの列が球場を半周も巻いている。
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快晴だが、真夏のようなはげしい陽光と風のないムッとくる熱気。夏の予選とたいして変わりない耐え難い日なたのスタンドで、観客たちがかれこれ1時間も試合開始を待っている。
地元・健大高崎が出ることもあろうが、この人気はやはり“横浜人気”だ。席は、一塁側の横浜高のスタンドからどんどん埋まっていった。
たしかに、今年のドラフト1位指名候補・藤平尚真投手をはじめ、花巻東高当時の大谷翔平(日本ハム)のような痛烈なセンター返しを見せる村田雄大外野手など、今年の横浜高も人材は粒ぞろいだ。万波中正、長南有航、入学したばかりの1年生の中からも、今から注目されている大型スラッガーがすでにベンチ入りしている。
走らせても、守らせても、打たせても天才。
それでも、何か物足りない。
シートノックを見ても、実戦での試合展開を見ても、もう一枚、何かが足りない。
淺間みたいな選手がいないなぁ……。
走らせても、守らせても、打たせても、いちいちキラキラ輝きながらプレーしているような“天才”が見当たらない。
みんな、一生懸命プレーしている。今の選手たちが全力で一生懸命プレーして出している“結果”を、淺間大基は涼しい顔をして、いとも簡単にやってのけてくれた。いや、本人に訊けば「とんでもない!」と首を振るのかもしれないが、少なくとも、私にはそういうふうにしか見えなかった。