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「一番強い馬でも必ずしも勝てない」
武豊が今も悔しがるダービーとは。
posted2016/05/23 11:00
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph by
Naoya Sanuki
5月29日、競馬の祭典「第83回日本ダービー」が行われる。マカヒキ、サトノダイヤモンド、リオンディーズに皐月賞馬ディーマジェスティの「4強」に加え、有力馬が多数揃う今回は、近年まれに見るハイレベルなレースとして注目を集める。そんな超豪華ダービーに、皐月賞4着馬エアスピネルで騎乗予定、前人未到のダービー6勝目を狙うのが、「競馬界の第一人者」武豊騎手だ。
Number902号では、今年で騎手生活30年を迎えた武騎手に26回に及ぶダービー挑戦の歴史について独占インタビューを行った。「ダービー制覇は子供の頃からの夢だった」。武騎手が語る歴戦のダービー馬たちの姿は、そのまま日本近代競馬の歩みそのものでもある。
「ダービーが遠い存在だとは思ってなかった」
武騎手が制したダービーは1998年のスペシャルウィーク、'99年のアドマイヤベガ、2002年のタニノギムレット、'05年ディープインパクト、'13年キズナの計5回。
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スペシャルウィークで、ダービーを初制覇した時を振り返ってもらうと、
「めちゃめちゃ嬉しかったです。ダービーの味っていいものだな、と思いました」
と自然と笑みがこぼれた。
この時、武騎手は29歳。'87年のデビュー以来、天才の名をほしいままにしてきた名手が10度目の参戦で掴んだ栄光だった。
スペシャルウィークで初制覇するまで、ファンの間では「武豊でもダービーだけはずっと獲れないのでは」と言われていた。今回改めてそのことを訊ねると、
「まわりが言っているほどダービーが遠い存在だとは思ってなかったんですけどね」
と前置きしたが、ダンスインザダークで挑んだダービーについては、淡々とした語り口の中に悔しさをにじませた――。