縦に強い個性はチームの戦術にフィットする。

　独力でボールを運んでいく推進力や、強引にでもシュートへ持ち込む力強さといった彼の個性は、手倉森監督の戦略に合致する。イラク戦の先制点に金崎を当てはめてみると、アシスト役にも得点者にもなれるはずだ。タイ戦の1点目にしても、遠藤の縦パスにきっちり反応し、DFの背後を突いているに違いない。

　システムへの順応も問題ない。手倉森監督がファーストチョイスとしてきた4-4-2は、金崎が所属する鹿島が伝統とするものだ。リオ五輪へのオプションと見込む4-2-3-1の1トップも、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表で経験済みである。

　OA招集の大前提として、手倉森監督は「U-23世代が納得できる人選かどうか」を条件にあげている。OAの招集によってメンバーから弾き出された選手たちが、「自分ではなくあの選手が選ばれるなら、精いっぱいチームを応援しよう」と思える選手を選びたいと考えている。

金崎の“獣性”は、U-23世代にはないもの。

　その意味では、所属クラブでの活躍が必要不可欠だ。第1ステージ11節終了現在で、金崎は得点ランキング8位タイの5ゴールを記録している。日本人選手では大久保嘉人（川崎）と興梠慎三（浦和）に次ぐ数字だが、さらに得点を積み上げていってほしい。U-23世代を含めた周囲を納得させるためだけでなく、彼自身が勢いをつかむためにも、である。

　金崎がピッチ上で放つ獣性は、U-23世代にはないものだ。何かをやってくれそうな期待感は、岡崎慎司や大久保にも見劣りしない。得点ランキングの上位へ躍り出ることで、手倉森監督の心を動かしてほしい選手である。