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吉田沙保里の好敵手がMMAデビュー!?
村田夏南子の可能性とRIZINの未来。
posted2016/04/24 10:30
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Susumu Nagao
昨年末に旗揚げしたビッグイベント『RIZIN』が、4月17日の愛知・日本ガイシホール大会で新たな可能性を手にした。レスリング出身のルーキー、村田夏南子である。
村田は1993年生まれの22歳。高校時代に柔道からレスリングに転向すると、全日本選手権で吉田沙保里に善戦して注目を集め、国際大会でも活躍してきた逸材だ。
プロデビュー戦となる今大会で、村田はその能力の高さを充分に発揮したと言っていいだろう。3ラウンドすべてテイクダウンに成功、関節技やパウンドも躊躇なく繰り出し、ロシアのナタリア・デニソヴァに3-0の判定勝ちを収めた。
終始圧倒していただけに、仕留めきれなかったという課題は残る。本人の自己採点も「30点」。試合を楽しむことはできたが、やはり緊張から動きが硬くなってしまったという。全力で関節技を仕掛け続けたために、試合後半は「手が張ってしまった」とも。
内容は「30点」でも、総合の対応力は合格点。
とはいえ、この「30点」は、今後の期待を高めるもの。100点の試合をしたらどれだけ強いのか、と思わせてくれるのである。
たとえばテイクダウンだ。レスリング選手がテイクダウンに成功するのは当然だと考えられがちだが、MMAにおいては打撃を恐れずに前進して組み付くことができたということ。それも“MMA適性”の一つだ。
状況に合わせた対応力も見せた。1ラウンド、サイドポジションからのアームロックでタップを奪えなかったことから、2ラウンド以降は上四方固めからの腕十字狙いに作戦を変更。相手の両腕を制圧するマット・ヒューズ・ポジションからのパウンド連打も披露している。一つの攻撃に固執せず、常に最善の選択肢を模索しながら闘っていたということだ。しかもそれは、セコンドの指示ではなく自分の判断だったという。
これだけのことができれば、デビュー戦としては合格点だろう。村田は“レスリングの強豪がプロデビュー”という以上の適性と可能性を見せたのだ。まだ未完成ではあるが、彼女が成長していく姿を見届けるという楽しみもある。そして、そんな村田の存在を、RIZINというイベントそのものと重ね合わせてみることも可能だ。