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「出すぎた杭」松山英樹が変える物。
五輪の報酬と、不評の5試合ルール。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/04/22 07:00
猛烈な追い上げを見せ、2打差で終えたマスターズ3日目。松山英樹は、いつビッグタイトルを手にしてもおかしくない位置にすでにいる。
シード選手に5試合の出場を義務付ける制度の問題点。
ゴルフファンの多くが知る通り、松山は現在、日本ツアーに籍を置いていない。
発端は松山が日本ツアーの賞金王に輝いた翌2014年に突如設定された“5試合ルール”。複数年シードを持つ選手に、日本ツアーで年間5試合以上の出場が義務付けられた。出場が4試合以下にとどまれば、同カテゴリにおける次のシーズンの出場資格を停止される。
2013年までは出場「0試合」で資格がキープできただけに、突然の規定変更への反響は大きかった。この措置が、松山や石川遼の海外流出による日本ツアーの人気低下を憂慮したものであることは疑いようがない。賞金王のタイトルで得た5年シードを突如剥奪された形となった松山は結局、日本ツアーのメンバー資格を放棄。米ツアーに専念する道を選んだ。
五輪メダルに端を発した問題から、松井副会長はこの5試合ルールについても「見直しが必要では」と持論を述べたのである。「潮目が変わるかもしれない」と思った発言だった。
石川、岩田、そしてこれからの選手にも負担になりうる。
松山のメダル獲得、海外メジャー制覇への期待の高まりが、再び規定の是非を問うている。この5試合ルールはいま、腰の故障で国内療養中の石川、そして米国参戦1年目の岩田寛のシーズン後半戦に影響を及ぼしかねない。将来海外に挑戦する選手たちにとっても、負担になりうる規定だ。
選手会の会長となった宮里優作も「できれば見直していただきたいですね。逆の立場(松山の立場)になったとして、資格がなくなってしまったら残念に思う」と慎重に選んだ言葉に強い意志を込めて話した。
仮にルールが変わったとしても、米ツアー専念を決めている松山がどう考えるかは別問題。ただ、「出る杭は打たれるが、出過ぎた杭なら打たれない」というフレーズが、頭の中に鮮明に浮かんだ。