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桜花賞を呆れる強さで勝って欲しい。
“絶対的一強”メジャーエンブレム。
posted2016/04/09 08:00
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph by
NIKKAN SPORTS
これほど揺るぎない「一強ムード」の漂うGIはいつ以来だろう。
第76回桜花賞(4月10日、阪神芝外回り1600m、3歳牝馬GI)は、昨年の2歳女王、メジャーエンブレム(父ダイワメジャー、美浦・田村康仁厩舎)が圧倒的な支持を得ることになりそうだ。
大きな流星、栗毛の雄大な馬体、そして、驚異的なスピードの持続力……それらをメジャーエンブレムは、父のダイワメジャーからそっくり受け継いだ。
新馬、500万下を連勝して臨んだアルテミスステークスでは、掛かり気味に先頭に立って流れ込みを狙ったが、外から伸びてきたデンコウアンジュにかわされ2着。「馬体を離して一気に来た相手に差される形が負けパターン」という、父の数少ない欠点までそのまま受け継いだかに見えた。
しかし、そこは名手クリストフ・ルメール、次走の阪神ジュベナイルフィリーズではそうした欠点を出さずに済むよう淀みない流れをつくり、圧勝。年明け初戦のクイーンカップでは、好スタートから馬の行く気に任せてハナに立って押し切り、1分32秒5という、この時期の3歳牝馬としては出色のレースレコードを叩き出し、2着を5馬身突き放した。
ついてくる馬がバテてしまうほどのスピードで飛ばしながら、ゴールまで失速せずに伸び切るのだから、ほかの馬はたまらない。追い込み馬が伸びてきたころには、もうゴールを駆け抜けている。ずっと先頭を走っている限り、進路を塞がれるなどの不利を食らう心配もないわけだから、言ってみれば、究極の強さを身につけているわけだ。
「女の子」特有のトラブルか、未対戦の馬か。
クイーンカップから桜花賞に直行して勝った馬が1976年のテイタニヤ以来出ていないことを不安視する向きもあるが、管理する田村調教師によると、ある程度間隔を空けて使ったほうがいい馬なので、前走後の2カ月は必要な期間だったという。桜花賞とオークスを勝ち二冠牝馬となったテイタニヤ以来、40年ぶりの快挙をなし遂げる可能性はかなり高いと見た。
いくら能力的に飛び抜けているとはいえ、メジャーエンブレムも「女の子」だ。特にこの時期は、フケ(発情)が来たり、歯替わりがあったりと、難しい。「絶対女王」といえども、能力発揮を阻害されるアクシデントに見舞われる可能性はゼロではない。それはほかの出走馬にも言えるわけだが、ともかく、この馬を負かすとしたら、まだ勝負づけの済んでいない未対戦の馬だろう。それも、同型の逃げ・先行馬ではなく、ラストの瞬発力を武器とする、対照的な脚質の馬でなければ厳しそうだ。