フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
世界フィギュア女子は至高の戦いに。
健闘した日本勢の戦いぶりを振り返る。
posted2016/04/07 17:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Asami Enomoto
すべての選手が目標にして調整してくる世界選手権で、シーズンベストスコアが出るのは毎年のことである。だが今大会の女子フリーほど、内容の濃い戦いはちょっと過去を振り返っても記憶にない。日本勢は5位、7位、8位と表彰台にこそ届かなかったものの、充実した立派な戦いぶりを見せてくれた。
浅田は真剣な表情でリンクの中央に出てくると、自分を落ち着かせるように「フーッ」と深呼吸をしたように見えた。
今季最後の『蝶々夫人』は、長年、浅田の振付を担当して見守ってきたローリー・ニコル渾身の作品である。「今のマオだから滑りこなすことができるプログラム」とニコルが形容した、プッチーニの名曲にのった悲恋の物語。笑顔で勢い良く滑る作品ではないだけに、大人のスケーターでなくては持ち味の出せないプログラムだ。
人々の心を温かくした浅田真央の品格。
冒頭の3アクセルを片足で着氷し、3フリップ+3ループも降りた。ルッツが2回転になってしまったのは惜しかったが、その後予定していたジャンプは、すべて片足で着氷。いくつかジャンプの回転不足の判定は出たものの、最後まで流れの途切れないプログラムだった。悲劇の主人公を演じながらも、観ている人々の心を温かくするのは浅田真央の持つ品格のためだろうか。シーズン最後の『蝶々夫人』を滑り終えた浅田真央は、ホッとしたように目をつぶって微笑みを浮かべた。
「自分の演技を目指した」と浅田。
「ショートがあまり良くなかったので、今日は点数や順位のことよりも、最終的には自分の演技をしたいという気持ちが強かったです」と、安堵の表情で語った浅田。
競う相手はかつての彼女自身のように、軽々とジャンプを跳ぶティーネイジャーたち。だがフリーでは3アクセルも3+3のコンビも入れ込み、一歩も引かないアスリート魂を見せた。
「15歳の頃に比べたら、やはり疲れというのは感じる」と言いながらも、「でも自分はスポーツ界の中ではまだまだ若い方。もっと年齢が上がっても頑張っている選手はいっぱいいらっしゃるので、私もそういった選手を目指して頑張りたいです」と、来季の続行への意欲を見せた。