野球善哉BACK NUMBER
侍ジャパンをリスクにしないために。
シーズン外の投球を、改めて考える。
posted2016/03/02 10:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Nanae Suzuki
あの時の小久保裕紀監督の采配は、間違いではなかったと今でも思っている。
昨年11月に行われた「世界野球WBSCプレミア12」(以下プレミア12)のことだ。
侍ジャパンは、準決勝の韓国戦で逆転負けを喫した。7回を無失点で抑えていた先発の大谷翔平(日本ハム)を降板させたことが敗因だ、と多くの評論家が解説していたが、少し角度を変えた見方をしていくと、あの判断には納得させられるものがあった。
確かに戦術のことだけで論じれば、采配ミスにも見える。だが、そもそもプレミア12にはMLB機構の指示でメジャー契約の40人枠の選手を派遣されず、大会の価値が不透明であった。そのような大会で、シーズンをフルに戦った投手が「行けるところまで」投げるということにどれだけの価値があるのだろうか。
つまり、あの時の決断が大谷の身体への影響を考慮してのものだったとしたなら、小久保監督は信頼のおけるリーダーだといえるのだ。
今回の代表は「飛車角落ち」か。
先日、3月5、6日に行われる台湾代表との強化試合の侍ジャパンメンバーが発表された。
大谷をはじめ、則本昂大(楽天)、松井裕樹(楽天)、藤浪晋太郎(阪神)など、有力な選手たちがメンバー漏れしたことで「飛車角落ち」のような報道がされているが、果たして本当にそうなのだろうか。
筆者はむしろ、今回の代表には昨秋の「プレミア12」に出場した投手は選ぶべきではないと思う。
よく考えてもらいたい。百歩譲って昨秋の「プレミア12」が侍ジャパンにとって勝たなければいけない大会だったとするならば、国内のベストメンバーを選ぶ必要があったことは理解できる。そして選出されたメンバーも、シーズン後の疲れがある中で懸命に戦ってくれた。
そんな無理を強いた選手たちを開幕直前に再び代表に呼ぶというのは、選手の体調面を考慮に入れたとき、無理があるはずなのだ。野球界はシーズン以外の登板について、もう少しデリケートに見ていく必要がある。