プロレスのじかんBACK NUMBER
ベルトを巻かない王者・柴田勝頼。
限りあるプロレスラー人生を思う。
text by
井上崇宏Takahiro Inoue
photograph byEssei Hara
posted2016/02/16 10:40
「トップの人間がひとり消えた。それをチャンスと捉えないヤツはプロレスをやめたほうがいい」と語る柴田。
柴田勝頼が王者となってNEVERは変わる!
オカダ・カズチカの持つIWGPヘビー級、このあいだまで中邑が保持していたIWGPインターコンチネンタル、そして石井のNEVER。各王座にそれぞれのカラーがあり、その特色というのはすなわち、ベルトを持っている人間のパーソナリティそのものだということに。
同日、メインイベントで行われたオカダvs.後藤のIWGPヘビー級選手権試合を、バックステージのモニターで観ていたが、心に響いてくるものはさほどなかった。
ならば……と、柴田は考えた。
「これからの俺の闘い。俺は新日本最強の証とされているIWGPヘビーのベルトが欲しいとは思わない。おそらくNEVERっていうのは、新日本においてはヘビー、インターコンチに次ぐ3番目のランク。だけど、その順番をひっくりかえす勝負をするのもおもしろいかなと思う。一番上と2番目と、本当はどっちが上なのかの勝負です。新日本に戻ってきてから4年目。俺はやっとそういう闘いに臨める権利を掴めたのかもしれない」
柴田が王者となってNEVERは変わる。
柴田勝頼のプロレスラーとしてのパーソナリティとは。
「もっと幅広いものにしたい。ゴツゴツ、バチバチも素晴らしいんだけど、プロレスはそれだけじゃないって俺はわかってるし、クラシカルな技術の攻防ももちろんできなきゃダメだ。そのへんは自分のプロレスの色としても常に落とし入れていきたいと考えていることだから」
中西学、永田裕志、小島聡、天山広吉らの存在とは?
現在、新日本には“第三世代”といわれる4人の男がいる。中西学、永田裕志、小島聡、天山広吉。90年代初頭にデビューした選手たちへの呼称である。
2005年、柴田は新日本との契約更改の席で、当時の社長から「今後、第三世代と言われる永田、天山、中西あたりには、いまの若い選手たちの踏み台になってもらうから」と言われ、選手をあたかも消耗品として捉えているかのような態度に激怒。これが新日本退団の直接的な原因と言われている。裏を返せば、当時、棚橋、中邑と共に結成させられた新闘魂三銃士として、会社からのバックアップ体制を保証されたということだが、当時の社長は、プロレスラー柴田勝頼のパーソナリティをあまりにも理解していなかった。
その第三世代が、いま、にわかに決起を始めている。
「俺たちの力はまだまだ衰えていない。まだまだこのリングを熱くできる」
そんな永田のアピールに静かに呼応したのが、柴田だ。