オリンピックへの道BACK NUMBER
問題は選考方式そのものではない。
五輪女子マラソン選考問題の核心。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2016/02/14 10:40
大阪国際女子マラソンで福士は日本陸連が設定した2時間22分30秒を上回り、日本歴代7位となる2時間22分17秒の好タイムで優勝した。
明確な道筋があるかのように見せた、という問題。
選考基準からすれば、福士に内定を出さないのは間違ってはいない。それでもここまでこじれた原因は、ハイレベルな派遣設定タイムを設けその重要性を打ち出したことで、代表内定への明確な道筋があるかのように見せたことだ。
もっと言えば、選考側への不信感だ。昨年の世界選手権代表選考同様、どういう判断のもとに選ばれるか分からないという不安だ。ゴールした直後、「リオだ!」と喜んだのと対照的に「名古屋でもっといい成績を出す選手がいるかもしれない」と慎重だった陸連への異議申し立てのような行動は、それを表している。
実は、複数大会で選考する国は多い。
実のところ、海外を見れば、マラソンで一発選考を採る方が少数派だ。ケニアなどは昨年から今年4月までの8つを超える大会から選考するし、欧州各国を見ても、一大会に限定するケースは少ない。それらをしても、複数大会から選考するのが間違いとも言えない。
マラソンに限らず、選考方式に唯一の正解はない。一発選考も、複数大会による選考も、あるいは複数枠のうち一部を一発選考、残りを実績で選ぶのもありだ。基準を、マラソンならタイムですべてを決めるのもありだし、順位を優先する方法もある。
だからやり方そのものが問題なのではない。今回に限らず、説明不足や周知徹底不足にうかがえる現場への気遣いのなさや曖昧さこそが問題であり、それは現場サイド、選手への目線の問題でもある。
福士がこのまま出場するとは限らない。欠場の可能性も相当の割合であるのではないか。おそらくは目的としていたであろう一石を投じることはできたし、昨年のシカゴから、大阪、名古屋と立て続けに走れば、いざリオでの勝負に大きなハンデを負うからだ。
そのリスクを知りつつ、オリンピックの座を自分の手でつかむために出場する可能性もある。
そうした選手たちを選考する側は、ただ選ぶだけにとどまらない、大きな責任を背負わなくてはならない。