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いまJリーグに足りないものは――。
信念貫く経営者といわきFCの挑戦。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byIWAKI FC
posted2016/01/21 10:50
左から大倉智・いわきスポーツクラブ社長、安田秀一・ドーム社長、ピーター・ハウストラ監督。
「選手はプロ化したが、フロントはアマチュア」
大倉の言う「僕の中での価値観」とは――。
大倉はJリーグが発足した頃を振り返って「選手はプロ化したが、フロントはアマチュアのままだった」と語っていたことがある。そうした問題意識があったからこそ、遠くバルセロナまで留学もしたのだ。
そして欧州滞在中、バイエルンのウリ・ヘーネスGM(当時)に言われた言葉が心に刺さった。
「サッカーはいかに負けるかが大事なんだ」
競技として勝利を求めるのは当然だが、仮に負けたとしても観客を喜ばせるサッカーができたかどうか。それこそがビジネスとしてのスポーツに求められる本質だと気づかされたのだという。
湘南でも、勝敗に関わらず観客の心を熱くさせるサッカーを追い求め、ボール奪取から一斉に攻撃を仕掛ける“湘南スタイル”を構築、J1昇格によって経営も上向いた。
だがいつしか、Jリーグの現実に割り切れない思いも抱くようになっていた。
Jリーグの現状に抱いた疑問とは?
「世界のサッカーはもはや守備の概念がないぐらい、前に前にとゴールを目指すのがスタンダードになっている。そういうサッカーがJリーグで繰り広げられてるのかなというのは甚だ疑問ですし、落ちない(降格しない)ように戦っているようにも見える」
そんな時に再会したのが、ドームの安田秀一社長だった。
2人は大倉が早大サッカー部、安田が法大アメフト部の出身だが、同学年で大学時代から面識があった。
ドームは「スポーツの産業化」というキーフレーズを打ち出している。大倉は安田が熱っぽく語るそうした言葉に「今まで悩んできたことが、ぐぐぐっとつながる」感覚を得たという。