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いまJリーグに足りないものは――。
信念貫く経営者といわきFCの挑戦。
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph byIWAKI FC
posted2016/01/21 10:50
左から大倉智・いわきスポーツクラブ社長、安田秀一・ドーム社長、ピーター・ハウストラ監督。
アカデミー無償化など、地域に貢献するクラブ経営。
設備面のみならず、監督には元オランダ代表でJ1広島でのプレー歴もあるピーター・ハウストラを招聘した。また、アヤックスではアカデミーでの人材育成に1人あたり年間400万円が投資されていることを引き合いに出し、地域の教育・人材育成に注力する姿勢を明確化。いわきFCではアカデミーを無償化することを表明している。またスポーツブランドが単にサプライヤーではなく、運営の主体的当事者としてクラブに関与するという点からも、強い意志が感じられる(いわきスポーツクラブは、ドームを筆頭株主とする子会社)。
そしてもう一つ、経営トップに就いた人物も、新生いわきFCの「本気度」を体現している。
昨年まで湘南ベルマーレの社長を務めた大倉智。これまで縁もゆかりもなかった福島の地で、ゼロからの再出発に「人生を懸ける」という。
湘南ベルマーレで代表取締役にまで上り詰めたが……。
大倉は日立製作所の社員選手を経て、Jリーグ1期生として柏レイソルなどでプレーした。現役引退後はスポーツ経営への関心から、当時バルセロナで開講されたばかりのヨハン・クライフ国際大学へ。その後、セレッソ大阪、湘南の強化部門を担当し、2014年に湘南の取締役社長、翌2015年には代表取締役社長の肩書きを手に入れた。念願だったクラブ経営の道に辿りついたばかりだったのだ。
市民クラブとして厳しい経営環境に置かれながらも、昨季はJ1で8位に入るなどチームは着実に成長していた。その地位を捨ててまで新たな一歩を踏み出したのはなぜなのか。
大倉は会見でこう説明した。
「14年間、Jリーグで編成などの仕事をしてきて、サッカーの持つ意味、スポーツの持つ意味とは何なのかをずっと考えてきました。年を重ねるごとに、勝った負けただとか、誰を獲った、誰を切ったとか、そんな話じゃないと思うようになった。いろんな方から、なんでJ1からそんなとこに行くのかと言われましたけど、僕の中での価値観は全然違うんです。今46歳ですが、10年後に『こういうクラブが本当の意味でのお手本なんだ』ということを示したい。このトライに人生を懸けてやりたいと思っています」