スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
希望より早く訪れた“ジダン監督”。
会長が野放しならば苦境は必至?
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAFLO
posted2016/01/05 12:00
レアル・マドリーが大切に大切に育ててきた“ジダン監督”は意外にもシーズン途中での登板となった。
レジェンドが“消耗品”とならぬことを祈るばかり。
ただ己の利益ばかりを主張している現在の選手たちを見る限り、彼らが監督交代と共に突然チームのために献身するようになるかどうかは疑わしいところだ。
何よりチーム強化の責任者となるスポーツディレクターが不在のまま、現場の需要を無視して選手を売り買いする会長を野放しにしている現状を変えない限り、いつまでたっても根本的な問題は解決されない。なにせペレスが会長を務めた13シーズンの間で、監督を解任したのはこれでもう10度目なのだ。
「今日は特別な日だ。家に戻ってきたのだから」
昨年5月、そう言って涙ながらに生え抜きクラブへの復帰を喜んでいたベニテスは、僅か7カ月であっさりと見限られることになった。
そんな人材の乱用を繰り返すペレスの手により、ジダンは恐らく本人が望んでいたよりずっと早いタイミングで大役を任されることになった。
ベニテスの解任を告げたのと同じ壇上で、ペレスは「君には不可能という言葉など存在しない」とのメッセージを新監督に送っていたが、はたしてジダンはその言葉をどう受け止めたのだろうか。
たとえバルセロナのグアルディオラさながらに一時代を築くには至らなくとも、せめてクラブのレジェンドが歴代の監督たちのように“消耗品”として使い捨てられることにはならないでほしいものだ。