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“隙あらば野間”はカープの投資だ!
緒方監督が野間峻祥に見る壮大な夢。
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byNanae Suzuki
posted2015/11/27 10:10
野間がつける背番号37は、緒方監督が新人時代につけたもの。期待の大きさの表われともいえるのだが……。
いつまでも赤松の足に頼ってはいられない。
「今のチームで相手バッテリーとガチンコの勝負をして盗塁できるのは、赤松(真人)くらい。いつまでも赤松に頼っていてはいけない。その可能性があるのが、(鈴木)誠也と野間なんだ」
走攻守すべてにおいて高いポテンシャルを秘める野間だからこその、目の前の結果だけでなく、その先にある大きな収穫のための判断だった。
打撃では振り切る力を持っており、守備範囲も広く、強肩。特に走力はチームメイトの菊池を彷彿とさせる躍動感がある。一気に二塁を蹴り、三塁を狙うスピードに乗った走塁はスタンドを沸かせるだけの魅力がある。その高い能力はチームメイト、首脳陣ともに認めるところだ。
緒方監督は野間の姿に、代走や守備固めからレギュラーまで上り詰めた自身の現役時代を重ねているのかもしれない。
鳥栖高から入団して2年目に一軍初昇格。その後もしばらくは途中出場が続いた。限られた出場機会ではあったが、一軍で得る感覚は、二軍で得るそれとは比べものにならない。
'95年に才能を開花させて外野のレギュラーを奪うと、スター街道を一気に駆け抜けた。ひとつのきっかけで一気に才能を開花させる可能性がある。それを知っているからこそ、野間を使いながら育てる道を選んだ。
結果的にシーズン中に爆発的な成長が見られたかと言えば、「イエス」とは答えにくい。今年1年だけを見れば、「隙あらば野間」は失敗だったかもしれない。
だが、野間起用に関しては短期的ではなく、中長期的視野で見ていたに違いない。“緒方選手”が26歳のシーズンで答えを出したように、野間に答えを求めるのも早計だろう。
結果を求められる勝負の2年目への準備。
一軍で戦った1年で体感したものを2年目にどうつなげるか。
来季は一定の結果が求められる。
広島の外野は中堅のレギュラー丸佳浩のほか、同世代で野間と同等の能力を持つ鈴木誠、打力が売りの松山竜平、エルドレッドに加え、新外国人のプライディがいる。3つしかない枠を勝ち取るのは容易ではない。
課題は打撃だ。外野のレギュラー獲りのためには、やはり打てなければいけない。
秋季キャンプで付きっきりで指導した石井琢朗打撃コーチは「疲れるといいスイングをする。自分の感覚はあるんだろうけどね」と指摘。
野間自身も「どうしても力が入ってしまう。そこを直さないといけない」と自覚する。初めて迎えたオフは打撃中心にトレーニングを行なうプランを立てている。
右も左も分からぬ1年目を全力で駆け抜けた。冬を越えれば、プロで2度目の春となる。
「いろいろ経験させてもらった。来年はしっかりやらないといけない」
「隙あらば野間」をポジティブな言葉へと変えることができるのは、自分自身だけだ。