沸騰! 日本サラブ列島BACK NUMBER
スプリンターズSは“女の武器”炸裂!
調教師が「ミラクル」と呼ぶ勝利。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/10/05 11:45
勝ちきれないレースが続いていたストレイトガールだが、戸崎とのコンビになって3戦でGI2勝と大きく飛躍した。
レースの様相が一変したラスト100メートル。
にもかかわらず、馬群は先頭から最後方まで16、17馬身の縦長になった。
ゆったり流れたのに、まるでハイペースのような展開になったのは、この開催の中山の芝が力を要する状態だったからか。
先頭のハクサンムーンとアクティブミノルがほぼ並んで直線に入った。
すぐ後ろにミッキーアイル、少し離れた内にベルカント、その外からサクラゴスペル、レッドオーヴァルなどが伸びてくる。ストレイトガールは依然として中団。先頭から5馬身ほど離されたそこから徐々に外に進路をとり、抜け出す隙間を探す。
ラスト200メートルあたりまでは先行勢が残るかに見えたが、しかし、ラスト100メートルを過ぎると様相が一変する。
ミッキーアイルがハクサンとアクティブをかわして先頭に立った。内からリッチタペストリー、外からウリウリ、ウキヨノカゼらが猛然と追い込んでくる。
なかでも勢いが違ったのは、レッドオーヴァルとコパノリチャードの間をこじあけるように伸びてきたストレイトガールだった。前をまとめてかわし、1着から6着までコンマ2秒以内にひしめく大混戦を制した。
藤原調教師「ミラクルな勝利」
「馬の力で勝たせてもらいました。素直で、根性があり、どんな競馬でもできるセンスがあります」と戸崎。
藤原英昭調教師も「どこから抜け出してきたのか、すぐにはわからなかったほどミラクルな勝利。狭いところから、よく伸びてくれた」と愛馬を讃える。
6歳牝馬による勝利はレース史上初。春のヴィクトリアマイルにつづく2つ目のGIタイトルとなった。スプリントとマイル両方のGIを制した馬は過去に6頭いたが、牝馬は1991年のスプリンターズステークスと安田記念を勝ったダイイチルビーのみ。「名牝」と呼ぶにふさわしい足跡を刻んだと言えよう。
勝ちタイムは1分8秒1。過去10年、中山の良馬場で行われた8回のなかで、オーストラリアのテイクオーバーターゲットが逃げ切った'06年と並び、もっとも遅いタイムでの決着となった。藤原調教師はこうつづける。
「スタート直後に他馬とぶつかっても、人馬とも怯まなかったことが勝因ですね。もう少し流れて速い時計の決着になれば、(もう1頭の管理馬である)ウリウリももっと上位に来られたと思う。ストレイトガールは1番人気だったんですか!? 1番人気でGIを勝つことは、厩舎を開業した当初からの目標だったので、嬉しいです」