野球クロスロードBACK NUMBER
山本昌50歳、ついに引退決断の時。
「ラジコンはもちろん再開するよ」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/09/29 11:45
ドラゴンズ一筋31年の山本昌。最終登板の機会をファンも楽しみにしているはずだ。
万全の状態は来季まで待たなければならない。
当初は「突き指」と報道されていたが、しばらく経って靭帯を痛めているのだと知らされた。現時点でも投げ込みは十分にできていない。今季中の完全復帰は絶望的で、万全の状態でマウンドに立つためには来季まで待たなければならないそうだ。
そんな状況下で落合博満GMから、「引き際は自分で決めろ」と一任され、ほかのベテラン選手が引退を決断した姿を目の当たりにしたのだから「自分もそろそろか」と、引き際を見定めるのも無理はない。
そもそも、山本昌が球団に引退する意向を告げたのは、これが初めてではないのだ。
右足首の手術の影響で、1986年以降では初めて一軍登板ゼロに終わった'11年にも、球団に「引退します」と自分の意思を伝えたことがあった。だがこの時は、球団から引き止められ現役続行を決意した。
「先発投手として機能できるか否か」という線引き。
山本昌にとって引退の線引きは、「先発投手として機能できるか否か」にあった。
現に'12年は47歳ながら3勝をマークし、'13年には前年を上回る5勝。昨年は1勝に終わったものの、それが国内の最年長勝利記録を塗り替える大きな勝利となった。「大ベテラン」と呼ばれるようになってからも、山本昌は先発として勝ち続けてきた。
今季も山本昌本人が「例年以上にボールがきている」と言っていたように、先発として投げられることをキャンプからアピールしていた。3月3日のソフトバンクとの教育リーグで、たった1球で右膝を痛めリハビリ生活を余儀なくされても、「6月には二軍だけど先発するから。状態はね、全然いいよ」と笑顔で話していた彼の様子からは、虚勢の色は全く窺えなかった。事実、6月に実戦復帰を果たしてからは、7試合26回2/3を投げ防御率2.36と安定感を示していた。
だが、8月9日のヤクルト戦でも、たった1球に泣いた。