野球善哉BACK NUMBER
準決、関東一vs.東海大相模を占う。
4投手併用と二枚看板の継投対決!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2015/08/18 16:30
花咲徳栄戦では「監督生活で初めての敬遠策」をとった東海大相模の門馬監督。故・原貢氏ゆずりの「攻める野球」を身上とする。
“二枚看板”の評判を利用して相手を欺く投手起用に。
この2人をどのように起用していくのか。
大会の序盤から注目していたのだが、初戦の聖光学院(福島)戦では吉田を先発させる。実は、この起用には多くの関係者が驚かされた。聖光学院の指揮官・斎藤智也監督が「吉田君の先発は予想外だった」と語っているのが象徴的である。
門馬敬治監督はこの起用について「調子を考えての起用。よくゲームを作ってくれた」と語るに留めているが、この起用はただ選手のコンディションだけで選択したものではなかったと筆者は見ている。
というのも、どれほど「二枚看板」という札がついていても、世間の評判からすれば、小笠原がエースだ。だから、重要な試合においてはエース格の小笠原が重宝されるはずだ。大会の終盤はさておき、スタートとなる初戦は小笠原が投げるはず……そう思うのが当然だろうが、門馬監督はその裏をかいた。
“小笠原と吉田のどちらを立ててくるのか読めない……”
かくして、門馬監督が対戦校に与える印象は一気に混乱したものとなった。事実、準々決勝で対戦した花咲徳栄(埼玉)の岩井隆監督は「門馬は何をしてくるか分からない」と話している。
小笠原と吉田の併用がさらに厄介なのは、2人が全く異なるタイプの投手であるということだ。
左腕でストレートが武器の小笠原と、右腕で変化球の切れがいい吉田。右打者からすると、インコースに食い込んでくる小笠原のストレートと、ボールが逃げていく吉田のスライダーのふたつを念頭に置いて戦う必要があるのだ。
それぞれ個性が際立つ関東一の多数の投手陣。
一方の関東一は、東東京大会からこれまで複数の投手で戦い抜いている。
地区大会ですら9回を完投したケースが1度もなく、一番多く登板している投手である背番号「10」の阿部武士でさえ、トータル13回3分の2となっている。この数字は、今大会に出場している主戦投手の中では今治西(愛媛)の杉内洸貴に次ぐ少なさだ。阿部はリズムよくゲームを作っていくタイプだが、エースナンバーの田辺廉は変化球を駆使して総合的な配球で相手を支配していくタイプだ。さらに、背番号「11」の小松原健吾は左サイドから投げ込む変則投手。今大会の登板が最も多い金子尚生(背番号16)は、決め球となる変化球を持ち、気合で乗り切るタイプの投手である。