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松岡修造が語る'95年ウィンブルドン
ベスト8の真実と、錦織圭への思い。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byHiromasa Mano
posted2015/06/26 17:00
松岡氏は2001年の修造チャレンジ「トップジュニアキャンプ」で錦織圭を指導した。
松岡氏が叫んだ言葉とは?
「この一球は絶対無二の一球なり!」
日本テニス界の大先輩、福田雅之助の言葉だ。松岡氏が振り返る。
「もしこのゲームを取られたら、また振り出しに戻ってしまうかもしれない。(中略)怖かったから、ああやっていつも自分が使ってきた言葉を叫ばずにはいられなかった」
そして、こう続けた。
「まあ、ぼくという人間がいかに錦織圭に比べると情けないかって象徴みたいなエピソードですよね。圭だったら、絶対にあんなことはしない。普通にパカーンって決めちゃうでしょうから」
「君たちも夢をあきらめずに、男子のツアーに挑戦してほしい」
とはいえ、松岡氏はこの後、連続でポイントを獲り、見事に勝利。日本男子として、62年ぶりとなる、ウィンブルドンのベスト8進出を果たした。ウィンブルドンのセンターコートでプレーすることを人生の夢としてきた松岡氏はこの瞬間、我を忘れた。
ラケットを放り出し、両手を掲げ、コートを走り回った。喜びをどうにか抑えると、ジョイスの待つ、ネット際へと向かった。右手を差し出した直後、松岡氏は、後ろへと倒れこみ、ウィンブルドンの青い空を見上げた。
試合の直後、NHKのインタビューでこう語っている。
「男子のテニス選手たち、そしていまジュニアでテニスをやっている人たち。ぼくは親に何度もテニスをやめろと言われた、本当に才能のない人間でした。でも、サービスしかできないこのぼくが、ウィンブルドンの舞台でベスト8に入っています。ぼくよりも才能のある選手はたくさんいます。だから、君たちも夢をあきらめずに、男子のツアーに挑戦してほしい。ぼくからのお願いです。よろしくお願いします」