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なぜ岩村明憲は独立リーグへ?
選手兼監督、そして福島の希望に。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2015/05/26 10:40
結果的には戦力外通告を受けた岩村明憲だが、昨年もヤクルトで1試合4二塁打という記録を作るなど力は健在。選手兼監督という立場でBCリーグに旋風を起こすか。
元巨人・真田らがコーチ兼務も、潤沢ではない戦力。
成績からも分かるように、福島ホープスの戦力は決して潤沢とは言えない。
コーチを兼務する真田裕貴(元巨人ほか)や村田和哉(元日本ハム)、昨年ヤクルトを戦力外になりトライアウトを経て入団した貴規、楽天からの派遣選手の高堀和也と、NPB経験者がいることはいる。しかし他の顔ぶれを見ると、福島県出身の新人選手など経験が浅い若手が目立つ。
しかし岩村は、それを理解した上でチームの成長を促している。開幕戦で新潟相手に0-5と完敗し、「悔しいですね」と苦い表情を見せながらも、前向きに言葉を紡いでいた姿が印象深い。
「半分がルーキーのようなチームですから。チームの出来としては40%くらいでしょう。うちはまだそういう段階なんです。負けたから言うわけじゃないですけど、同じミスを繰り返さないとか、負けて得られるものはあるんでね。うちは、他のチームからたくさん学んでいかないといけませんから」
トップレベルの技術よりも、シンプルなプレーを。
岩村は、自らが培ったトップレベルの技術を選手達に植え付けようとはしていない。あくまでも大事なのはシンプルなプレー。それを選手たちに徹底させることを第一に考えている。
打席では、仮に安打が出なくとも四死球やエラーでもいいから出塁することを心がける。守備も同様に、当たり前のプレーを当たり前にする。岩村自身、練習や試合前のノックでは極力正面など処理しやすい打球を打つことを心がけているという。投手ならば相手に合わせるのではなく、自分のリズムでベストボールを投げることに集中させる。
シンプルなプレーが身につけば、おのずとミスは減る。野手と投手、そしてベンチ全体に信頼関係が生まれてくれば、チーム力は高まっていく。岩村の狙いは、そこにある。
そのためならば、自分などいくらでも犠牲になる――。そんな岩村の姿勢が垣間見られたのが、4月17日に行なわれたホーム開幕戦、武蔵戦だった。
福島初の県民球団、チームには看板とも言える岩村がいる。ファンは当然、選手兼任監督の出場を待ちわびている。岩村自身、試合前日には「出る準備はしている」と、『代打オレ』の実現をほのめかしていただけに、より期待は高まっていた。